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STUDY

KIT Yeast Groupでは、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いて実験を行なっています。出芽酵母は、ワインや日本酒、焼酎などの酒類、パン、バイオ燃料などを製造する際に使われており、我々の生活と非常に深いつながりを持つ最も有用な微生物のひとつです。また、ヒトと多くの代謝メカニズムが共通する上、真核生物で最初にゲノム配列が解読されたため、真核細胞のモデル生物として世界中で幅広く研究に用いられています。私たちは国内外のビックラボにはないユニークな視点を大事にして、基礎研究だけでなく醸造過程を中心とした応用研究の両方に励んでいます。

キーワード:stress resilience, proteostasis, bi-chaperone system, ubiquitin-proteasome system, selective translation, stress granules, P-bodies, ethanol stress, yeast, brewing related stress.

 

KIT Yeast Group members are doing research using mainly budding yeast Saccharomyces cerevisiae. Yeast is deeply involved in our daily life because it is quite useful for making wine, Japanese sake, bread, biofuel, etc. Additionally, yeast is a very useful and simple model organism for basic life science. Yeast has the similar metabolic system with human being and S. cerevisiae is the first eukaryote in which sequencing of genome DNA was completed (1996). Therefore, we can easily access to tons of valuable information from the database and lots of scientists all over the world are using yeast system. We are everyday struggling to find something new in both basic and applied scientific fields with our own unique approach.

 

エタノールストレス下のプロテオスタシスとバイシャペロンシステム

 

 細胞内タンパク質の恒常性は合成 (翻訳)・品質・分解のバランスによって維持されています。シビアなエタノールストレスによって翻訳が阻害されるだけでなく、一部のタンパク質は変性・凝集して、細胞内のdeposition siteと呼ばれる場所に隔離され集積されることを明らかにしました。また、タンパク質の分解を担うユビキチン-プロテアソームシステム (UPS) の活性もエタノールストレスによって阻害されることを見出しています。一方で、マイルドなストレスで前処理することによって、シビアなエタノールストレス下でも翻訳活性やUPS活性が回復・維持され、変性タンパク質が蓄積しなくなるという酵母のストレスレジリエンスを確認しています。私たちはそのメカニズムの解明と、変性タンパク質の修復・排除機構の応用に取り組んでいます。

 

 関連論文

・Nguyet et al. (2022) BBA Gen. Subj. [PubMed]

・Furutani and Izawa (2022) FEMS Yeast Res. [PubMed]

・Yoshida et al. (2022) Microbiol. Spectr. [PubMed]

・Yoshida et al. (2021) Appl. Environ. Microbiol. [PubMed]

・Kato et al. (2019) FEMS Yeast Res. [PubMed]

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大気圧低温プラズマの応用研究

 

 微生物の殺菌方法としては、高圧蒸気や放射線、酸化エチレンガスなどが広く用いられています。しかし、高温や照射に伴う材質の劣化、有害物質の残留といった問題点を有しているため、生鮮食品などの熱に弱く安全性が求められる物への利用は困難です。これらの問題を解決するために、大気圧低温プラズマ(Cold Atomospheric pressure Plasma, CAP)に着目して研究を進めています。CAPによる殺菌は、プラズマの発生に伴って生じる活性種が大きく寄与するとされていますが、作用機構や利用法についてはまだまだ情報が少ないのが現状です。私たちはカビや酵母などの真菌類に対するCAPの抗菌効果の研究や、CAPによる残留農薬の分解・植物種子の発芽向上などの応用研究を行っています。

 

 関連論文

 ・Fukuda et al. (2023) J. Biosci. Bioeng. [PubMed]

 ・Fukuda et al. (2019) J. Biosci. Bioeng. [PubMed]

 ・Itooka et al. (2018) Appl. Microbiol. Biotechnol. [PubMed]

 ・Itooka et al. (2016) Appl. Microbiol. Biotechnol. [PubMed]

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ストレス応答におけるmRNA flux

 

​ 酵母を始めとする真核生物では、ストレスによって翻訳が阻害されると非翻訳状態のmRNAがP-bodyやstress granule (SG)とよばれるmRNP granuleに隔離されます。これらの構造体には、mRNAの分解や翻訳の制御あるいは非翻訳状態のmRNAの隔離などの役割があると考えられていますが、形成が誘導される条件を含めて、不明な点が多く残っています。 

 私たちは、発酵・醸造に関連するエタノールストレスや酸、バニリンやフルフラール等のバイオマス由来発酵阻害物質によってP-bodyやSGの形成が誘導されること、翻訳が抑制されてしまうことなどを明らかにしました。現在、どのmRNAがどんな時にP-bodyやSGに隔離されてしまうのか、その分子メカニズムについて研究を進めています。

 一方、グルコース枯渇やエタノールストレス、バニリンストレスは細胞の翻訳を抑制してしまう非常にシビアなストレスです。そのため、生き残る上で本当に必要とされるごく一部のmRNAしか翻訳されていないと考えられています。我々は、エタノールやバニリンストレス下でも優先的に翻訳されているmRNAを同定し、その分子機構の解析を行っています。また、そのメカニズムを利用して、酵母の発酵能やバイオエタノール製造効率の飛躍的な改善に取り組んでいます。

 関連論文

・Ando et al. (2023) J. Biol. Chem. [PubMed]

・Ishikwa et al. (2022) BBA Gen. Subj. [PubMed]

・Nguyen et al. (2018) Yeast [PubMed]

・Ishida et al. (2017) J. Biotechnol. [PubMed]

・Yamauchi and Izawa (2016) Front. Microbiol. [PubMed]

・Iwaki et al. (2013) Appl. Environ. Microbiol. [PubMed]

・Kato et al. (2011) Yeast [PubMed]

論文紹介リスト

セミナーで紹介した論文リストは >>こちら

 

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