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Journal club 2017

  • Simon et al. (2012) Molecular mechanisms of spatial protein quality control.Prion 6:437-442 本論文ではミスフォールディンクタンパク質の空間的隔離にBtn2とCur1が関与していることを示している。タンパク質の品質管理(protein quality control, PQC)にはミスフォールディンクタンパク質を分解し除去すること、リフォールディングすることの他に、ミスフォールディンクタンパク質を細胞内に散乱させず一部に凝集・隔離することも含まれる。酵母細胞を熱、エタノール、高塩濃度などのストレスで処理するとタンパク質のミスフォールドが起こりやすくなると同時にBtn2とCur1の発現量も増加する。またCo-chaperonであるSis1は細胞質に蓄積するようになる。ストレス下でBtn2やCur1はSis1と複合体を形成し、Sis1の活性や能力を制御すると考えられている。また、この複合体はミスフォールディンクタンパク質を核に局在化しINQやJUNQを形成する。さらにBtn2は、Hsp42依存的にミスフォールディンクタンパク質を細胞質のperipheral regionに隔離する役割を持つ。このようにBtn2とCur1はストレスに応答する形で発現量が増加し、ミスフォールディンクタンパク質のsorting factorとしてPQCにおいて重要な役割を果たしている。(紹介者 白木)

 

  • Klaips et al. (2014) Spatial quality control bypasses cell-based limitations on proteostasis promote prion curing. eLife, 3, e04288.プリオンとはタンパク質性の感染因子であり、何らかの原因で生じた異常型タンパク質(これをプリオンという)が自己触媒的に正常型を異常型に転換して増殖する。酵母のプリオンとしては[PSI⁺]が知られておりSUP35 遺伝子が関与している([]でくくっているのは細胞質性の遺伝因子の表記法)。異常型のSup35タンパク質は自発的に繊維状の凝集体(アミロイド)を形成する。本論文では、出芽中の細胞に熱ストレス(30˚C→40˚C)をかけると[PSI⁺]/Sup35のアミロイドがHsp104によって切断・脱凝集化され、プリオンが増殖能を失い細胞がcuringされるというメカニズムを提唱している。本論文を理解する上で重要な背景として、細胞分裂に際して変性タンパク質および変性タンパク質とaggregateを形成するHsp104は母細胞側だけにとどまり非対称な分配をうける(娘細胞は変性タンパク質を引き継がない)(Zhou et al. 2011) という点と、hsp104∆やHSP104過剰発現株では異常型のSup35は消失してしまい、適度な量のHsp104がプリオンの維持・伝播に必要(Ness et al. 2017)という2点である。 著者らは[PSI⁺]weak株の細胞周期を同調させて、出芽していない細胞および出芽中の細胞を用いて実験を行っている(出芽酵母MAT a型株にα-factor処理を行うと接合に必要な遺伝子を発現させるために細胞周期のG1期から先へと進まなくなる。またノコダゾールは微小管の働きを阻害するため、染色体が分離できなくなりM期への移行ができなくなる)。出芽前の細胞に熱ストレスを与えてHSP104の発現を誘導しても、分裂を始める際にはHsp104濃度は母細胞側でそれほど高まらないため、プリオンは脱凝集されず維持されてしまう。一方、出芽中の細胞を熱ストレスで処理すると、変性タンパク質とHsp104は母細胞側に濃縮され、ちょうどHsp104を過剰発現した状態に母細胞側はなるので、プリオンはモノマーにまで脱凝集され、以降伝播しなくされる(curingされる)と著者らは報告している(下図参照)。関連論文:Zhou et al. (2011) Cell, 147:1186-1196. doi: 10.1016/j.cell.2011.11.002.Ness et al. (2017) Mol. Microbiol., 104:125-143. doi: 10.1111/mmi.13617. (紹介者 白木)

  • Glomb and Gronemeyer(2016) Septin organization and functions in budding yeast. Front. Cell Dev. Biol., 4,123.出芽酵母のセプチンに関するshort review。出芽および細胞分裂においてセプチンは重要な役割を担っている。出芽部位にseptin ringやseptin collarを形成することで、細胞分裂部位にリクルートされるタンパク質の足場となったり、母細胞から娘細胞への輸送小胞の拡散障壁の役割を果たしていると考えられている。 出芽酵母のセプチンはCdc11-Cdc12-Cdc3-Cdc10-Cdc10-Cdc3-Cdc12-Cdc11からなる八量体を基本構造に、八量体同士がend-over-endで会合することでfilamentなどの高次構造を形成する。両端のCdc11はしばしばShs1と置き換わるが、Shs1のみの八量体ではend-over-endでfilamentを形成できない(Booth et al., 2015)。一方、Shs1に置き換わるとリングを形成する曲線を形成しやすくなることが報告されている(Garcia et al., 2011)。また、Cdc10とCdc12はGTPase活性を持つが、Cdc3とCdc11からはGTPase活性が検出されていない(Versele and Thorner, 2004)。 セプチン細胞骨格のorganizationはCdc42に依存している。Cdc42のエフェクターであるGic1/Gic2、サイクリン依存性のキナーゼCdc28やPho85の働きによって、G1期初期に出芽予定部位へとseptinタンパク質はリクルートされる。この際、細胞膜のPIP2がseptinのリクルートに対して促進的な作用を示すことが示唆されている(Bertin et al., 2010)。 出芽部位で形成されたseptin ringは細胞周期の進行に伴いM期でseptin collarへと変化し、母細胞側と娘細胞側それぞれのリングの間にあるアクトミオシンリング(AMR)が収縮することで母細胞と娘細胞に分かれる。細胞分裂後はseptin ringは消失し、分解またはリサイクルされる。 細胞周期と連動したセプチン細胞骨格の時空間的制御には多くの因子が関与しており、これまでにCdc42の下流に位置するキナーゼCla4やsmall Ub-like modifier (SUMO)、Gin4 (bud neck kinaseでShs1をリン酸化修飾する)、Hsl1, Elm1などが報告されている。(紹介者 白木)

  • Andoh et al. (2006) Visual screening for localized RNAs in yeast revealed novel RNAs bud-tip.Elsevier Inc.10.1016/j.bbrc.2006.10.139 本論文では、U1A tagを付加したmRNAと、U1A配列に結合するGFP fusion (U1A-GFP)をそれぞれGAL1 プロモーター下で発現し、酵母mRNAの細胞内局在を網羅的に解析している。その結果、CSR2DAL81SHE2依存的に出芽先端部に局在化することを明らかにした。5’末端側にU1A tagを付加した場合には新生RNAを検出することが可能であり、核内の転写部位を明らかにすることも可能であった。CSR2DAL81は転写制御においてC源やN源の有効利用に大切な役割を果たしており、これらのmRNAは栄養が不足している出芽先端に局在し、「Starting-up package」として働いているのではないかというのが著者らの考察である。(紹介者 白木)

  • Cheng et al. (2017) Protective effects ofarginine on Saccharomyces cerevisiae against ethanol stress. < Sci. Rep. 6 , 31311.エタノールストレスに対するアルギニンの防御効果を報告している。エタノールを 8 %あるいは 10 %含む SD 培地、 YPD 培地のいずれにおいても、緩やかながら酵母の生育が確認された ( 初発 OD 600 =0.2 、 48 時間後の OD 600 は SD 培地で 0.6 (8%) あるいは 0.4(10%) 、 YPD 培地で 3.0 あるいは 1.2) 。また、エタノールストレス下では細胞内アルギニンレベルの減少が観察されたが、培地中にアルギニンを添加することによって 8 %エタノール存在下での生育が有意に改善された。そこで、アルギニン生合成系の最終段階を触媒する Arg4 の過剰発現株、アルギニンをオルニチンへと代謝する Car1 の欠損株および過剰発現株について検討し、細胞内アルギニンレベルが低下するとエタノール耐性が悪化すること (CAR1 過剰発現株 ) を確認した。細胞内のアルギニンが欠乏するとエタノール存在下で ROS や生体膜へのダメージの蓄積が亢進することから、 ROS の蓄積防止を介してアルギニンがエタノール耐性に寄与していると著者らは述べている。

  • Duy et al. (2017) Cytoplasmic deadenylase Ccr4 is required for translational repression of LRG1 mRNA in the stationary phase. PLoS One 12(2): e0172476 筑波大学 入江研究室からのレポート。Ccr4がLRG1やPuf5標的mRNAのポリ(A)鎖長を分解してmRNAを不安定化し、さらに翻訳活性を抑制することで定常期での遺伝子発現制御に関与していることを明らかにした。 Rho1のGAPをコードするLRG1 はPuf5 の標的遺伝子であり、その発現は、野生株では定常期に入ると抑制される。一方、polyA鎖分解酵素であるCcr4の欠損株では、LRG1 mRNAのpolyA鎖の過剰伸長やmRNAレベルとタンパク質レベルの増加が観察され、この傾向は定常期でより顕著であった。さらに興味深いことに、ccr4∆株では定常期には入っても翻訳活性の低下が認められなかった。また、ccr4∆株は温度感受性を示し37˚Cでの生育が悪化するが、LRG1をマルチコピーベクターで導入することにより、さらに生育が悪化した。このようなccr4∆株の表現型の多くはPab1結合タンパク質であるPbp1の欠損との組み合わせ(ccr4∆pbp1∆)によって抑圧されたが、さらに別のポリA鎖分解酵素であるPan2の欠損(ccr4∆pbp1∆pan2∆)を組み合わせることによってキャンセルされてしまった。以上の結果から、LRG1の発現を抑制することが定常期やストレス下でのサバイバルには必要であり、polyA鎖の分解を介したmRNAの不安定化や翻訳の抑制によってCcr4がLRG1の発現抑制に関与していることが示唆された。一方、Pbp1はPan2機能の抑制に寄与していると考えられる。 さらに著者らは、Ccr4による遺伝子発現制御はLRG1に限られたものではなく、他のPuf5標的遺伝子に対しても同様に定常期で発現を抑制していることを見出した。Puf5は標的遺伝子のmRNAに結合してCcr4をリクルートすることが知られており、LRG1をはじめMCM2/4/7やELM1など多くの標的遺伝子が同定されている。MCM2/4/7およびELM1の定常期での発現は、野生株やccr4∆pbp1∆では抑制されたが、ccr4∆やpuf5∆では高いレベルを維持したままであった。Lrg1やMcm2/4/7タンパク質の分解効率などについては詳しく言及されていないが、定常期の細胞内に多く存在すると不都合なタンパク質(Puf5の標的遺伝子の産物???)は、Ccr4やPuf5を介して積極的に発現が抑制されており、適切な恒常性を保っていることが示唆された。(紹介者 白木)

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