top of page

Journal club 2018

 

  • Zhou et al.(2011)Motility and segregation of Hsp104-associated protein aggregates in budding yeast. Cell, 147(5):1186-96出芽酵母は損傷を受けた変性タンパク質の凝集体を主に母細胞側で処理する。これまで、凝集体はアクチンフィラメントによって娘細胞から母細胞に輸送され、フォルミンタンパク質であるBni1がこの輸送を調節すると考えられてきた。本論文では顕微鏡観察によって、Hsp104を含んだ変性タンパク質の凝集体(Hsp104-associated protein aggregates)の運動性や局在などを解析している。ヒートショックによって形成された変性タンパク質の凝集体は規則的に移動するのではなく、不規則なrandom movementを行うことが確認された。このrandom movementにはアクチンフィラメントが関与していると考えられているが、今回の解析ではフォルミンタンパク質の関与は認められなかった。また、凝集体の大部分は娘細胞から母細胞に輸送されて除去するのではなく、それぞれの細胞内で除去することが確認された。一方、出芽を十数回繰り返し加齢した酵母では凝集体の発生が母細胞に集中し、random movementは行うが、娘細胞側に輸送されることはなかった。凝集体が加齢した酵母の母細胞に集中するのは凝集体の動きがおそくなることが原因であるかどうかを調査することが今後の課題である。(紹介者 石川)

  • Sun and Brodsky(2018)The degradation pathway of a model misfolded protein is determined by aggregation propensity. Mol. Biol. Cell, 29(12); 1422–1434.タンパク質の立体構造は品質管理機構(Quality Control)によって多段階的に監視されている。小胞体(ER)における品質管理機構(ERQC)は主にERAD(ER-associated degradation)によって行われ、基質はユビキチン化された後、プロテアソームで分解される。ERQCで感知されなかったミスフォールドタンパク質は小胞体より下流の分泌経路の品質管理機構(post-ERQC)で処理される。post-ERQCにはゴルジ(GQC)や細胞膜(PMQC)での品質管理機構が含まれており、この経路で検出されたミスフォールドタンパク質はESCRT(Endosomal Sorting Complex Required for Transport)によって輸送され、液胞/リソソームで分解される。本研究で著者らはERQCとpost-ERQCがどのようにして基質を選択しているのかを調査するために両方の経路で認識されるSZ*というモデルタンパク質を作成した。このタンパク質はヒートショックを与える、もしくは過剰発現させる事によりERADで分解される割合が増加し、濃度に応じて凝集を引き起こしやすくなる性質を持つ。さらにpost-ERQCの基質にSZ*のミスフォールドドメインを融合させる事でERADの基質としての特性を与える事も可能である。今回のモデルタンパク質を利用する事により、タンパク質品質管理におけるERADや post-ERADの寄与について理解が深まることが期待される。(紹介者 吉田)                                                                                                                                                       

  • Summers et al.(2013)The Type II Hsp40 Sis1 Cooperates with Hsp70 and the E3 Ligase Ubr1 to Promote Degradation of Terminally Misfolded Cytosolic  Protein. PLoS One., 8(1):e52099.変性タンパク質処理のトリアージシステムにおいてHsp70とユビキチン・プロテアソーム系がどのような働きをしているのかは不明であった。本論文ではHsp70/Hsp40とユビキチン・プロテアソーム系が相互作用し、ミスフォールディングタンパク質を凝集させる新たなメカニズムを報告している。この研究はN末端側にミスフォールドしやすい領域(disordered region)を持つslGFPを用いて行われている。slGFPはHsp104やHsp70, Sis1, Ydj1と物理的相互作用をすることをまず確認している。タイプⅠのHsp40であるYdj1はHsp70と作用し、slGFPの凝集を抑制した。対照的にタイプⅡのHsp40であるSis1はHsp70と作用し、slGFPの凝集体形成を促進した。ユビキチンE3リガーゼのUbr1やSan1がslGFPの凝集体をユビキチン化し、さらにプロテアソームによって分解されるため、ubr1∆やsan1∆ではslGFPの分解効率が低下した。また、Sis1の活性が低い状態では、slGFPの凝集体が細胞内に複数形成される様になった。これらの解析を通じ、変性タンパク質はシャペロン/コシャペロン及びユビキチン・プロテアソーム系によって処理されていることが示された。(紹介者 石川)

  • Kono et al. (2012) Proteasomal Degradation Resolves Competition between Cell Polarization and Cellular Wound Healing. Cell, 150 (1):151-164.細胞損傷時の主な修復応答として細胞骨格の再配置が挙げられる。詳細は修復応答の機構毎に異なるが、細胞の極性・分裂に関わる細胞骨格とシグナル分子が損傷部位に集合する点が各機構に共通している。例えば、大きな傷を修復する場合はパースストリング(F-アクチンとタイプ2ミオシンで構成された収縮環に似た構造)が膜同士を引き付けあう(Bement et al., 1999; Sonnemann and Bement,2011)。本研究で著者らは、レーザーによる局所的な細胞膜/壁の損傷によって、出芽時の娘細胞に局在していたBni1(アクチン線維の集合を誘導するフォルミンタンパク質の1種)、Sec3(エクソシスト複合体のサブユニット)が分解されることでアクチン線維の局在が解消され、その後、損傷部位における修復機構が活性化されることを新たに発見した。また、細胞分裂と損傷修復の機構が拮抗的に制御されており、Bni1とSec3の分解により、損傷修復へと均衡が傾く事を指摘している。                                                            (細胞膜/壁の損傷により誘導される修復応答モデル)                                                     細胞損傷のシグナルはRom2(GEF:Guanine nucleotide exchange factor)からRho1(GTP結合タンパク質)、Pkc1(セリン/スレオニンキナーゼ)を介してBni1に伝わり、リン酸化されたBni1はRsp5(ユビキチンリガーゼ)によりユビキチン化され、プロテアソームにより分解される。Bni1が消失することで、娘細胞に局在していたアクチン線維が分解され、続いてMyo2(タイプ5ミオシン)とPkc1の局在が解消される。さらに、Bnr1(フォルミンタンパク質の1種)、Myo2、Pkc1らが損傷部位で活性化され、以降の損傷修復機構が進行する。(紹介者 吉田)

  • Grousl et al. (2018) A prion-like domain in Hsp42 drives chaperone-facilitated aggregation of misfolded proteins. J. Cell Biol., 217(4):1269-1285.凝集活性を持つシャペロンはミスフォールディングタンパク質を凝集させ、細胞内の特定部位に蓄積・隔離する。この反応はタンパク質の品質管理による新たな細胞保護のやり方だと言えるが、そのメカニズムはほとんど知られていない。酵母ではストレス状態のときにsmall heat shock proteinのHsp42がミスフォールディングタンパク質のサイトゾル凝集体(CytoQ)の形成を促す。本論文では、Hsp42のプリオン様ドメイン(PrlD)と内因性不定形ドメイン(IDD)について解析を行い、PrlDはCytoQの形成に必須であり、自己会合機能とミスフォールドタンパク質に結合する機能を持つことを明らかにしている。一方、IDDはシャペロンの凝集活性を制限し、CytoQの数や安定性を制御しており、IDDを欠失すると形成されるCytoQの数が増加した。そのため、熱ストレスへの十分な適応にはHsp42のPrlDとIDDが不可欠であった。(紹介者 石川)

  • Kono et al. (2016) Plasma membrane/cell wall perturbation activates a novel cell cycle checkpoint during G1 in Saccharomyces cerevisiae. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 113(25):6910-6915.細胞周期は、サイクリン依存性のタンパク質リン酸化酵素であるCDK (Cyclin-dependent protein kinase)が、時期に応じて発現量が変動するサイクリンによって活性化されることで次のフェーズへと進行する。この機構は様々な因子によって調節されており、次のフェーズに移行する準備が完全に整うまでCDKは活性化されないため、異常や不具合がある場合には細胞周期進行が停止(もしくは減速)する(細胞周期チェックポイントと呼ばれている)。著者らは、SDSによる細胞膜ダメージを感知するチェックポイントの存在を新たに発見した。このチェックポイントには細胞周期をpre-RC(複製前複合体)形成の段階で停止させる機能があり、著者らはこの機能に関わる二つの経路を特定した。主要な役割を担っているのはpre-RC形成に関わるCdc6がMck1によるリン酸化を介して分解される経路であり、もう一つのCDK阻害タンパク質であるSic1を安定化する経路はバックアップの経路であることを明らかにしている。また今回の実験でMck1以外のリン酸化酵素がCdc6分解へ関与している可能性や、さらなる制御機構が存在している可能性が挙げられており、今後の研究が期待される。(紹介者 吉田)

  • Redruello et al. (1999) Multiple regulatory elements control the expression of the yeast ACR1 gene. FEBS Lett., 445(2-3):246-250. コハク酸フマル酸トランスポーターをコードするACR1遺伝子は炭素源としてエタノールを使用する際に必要とされる遺伝子であり、その発現はエタノールによって誘導され、グルコースによって抑制される。糖新生に関わる遺伝子の中には、トランスエレメントCat1を介して転写活性を調節するシスエレメントCSRE (Carbon Source Response Element)を持つものが存在する事が知られていたが、今回新たにACR1遺伝子にも存在する事を明らかにしている。さらにストレス応答性のシスエレメントであるSTRE (STress Response Element)もACR1遺伝子のプロモーター領域に存在し、CSREとSTRESの2種類のシスエレメントによってACR1の転写調節が行われていると考えられている。(紹介者 吉田​)

  • Yong et al.(2011) TCA cycle‐independent acetate metabolism via the glyoxylate cycle in Saccharomyces cerevisiae. Yeast, 28: 153-166.
    ミトコンドリアに局在し、TCAサイクルで重要な働きをするクエン酸合成酵素Cit1を欠損すると、TCAサイクルの機能不全が起こるため、酢酸を炭素源とする増殖ができなくなると考えられていた。しかし今回の実験で、ペルオキシソームに局在し、主にグリオキシル酸サイクルで機能するCit2も酢酸を炭素源とする増殖をサポートする事が新たに明らかとなった。これは、酵母エキスとペプトンを含む栄養リッチな酢酸培地 (YPA培地) とイーストナイトロジェンベースを使った酢酸最小培地 (YNBA培地) では、使用される回路が切り替わっているためである。YNBA培地では、ペルオキシソームでもCit2を用いて活性酢酸がクエン酸へと代謝され、ミトコンドリア(Cit1依存的)とペルオキシソームの両方から供給されたクエン酸が細胞質中のグリオキシル酸サイクルで代謝される。この際、TCA回路はほとんど機能していないため、cit1∆はYNBA培地で生育が可能であった。一方、YPA培地では、ペルオキシソームでのCit2依存的な活性酢酸の代謝が抑制され、TCA回路とグリオキシル酸サイクルの両方でクエン酸の代謝が行われる。活性酢酸の代謝がCit1のみに依存するため、cit1∆はYPA培地で生育が不可能である。詳しい酢酸代謝の経路や回路の切り替えの機構などは明らかになっていないが、ここまでの事実をもとに酢酸代謝のモデルが作成されている。(紹介者 吉田)















                                           

  • 酢酸代謝に関する仮説モデル                                                               (A YNBA培地) 活性酢酸は、ミトコンドリアでCit1依存的にオキサロ酢酸と結合してクエン酸へと代謝されるだけでなく、ペルオキシソームでもCit2依存的にクエン酸へと代謝される。生じたクエン酸は、主として細胞質中のグリオキシル酸サイクルで代謝され、TCAサイクルはほとんど働いていない。そのため、cit1∆でも生育が可能である。(B YPA培地) 活性酢酸は、ミトコンドリアでのCit1依存的な代謝が主であり、ペルオキシソームでの代謝はほとんど行われない。生じたクエン酸も、グリオキシル酸サイクルだけでなくTCAサイクルでも代謝される。ペルオキシソームでのCit2依存的な代謝が誘導されないため、cit1∆はYPA培地場では生育できない。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

  • Ma et al. (2013) An atmospheric-pressure cold plasma leads to apoptosis in Saccharomyces cerevisiae by accumulating intracellular reactive oxygen species and calcium. J. Phys. D: Appl Phys., 46; 8pp 非熱プラズマは、様々な細胞のアポトーシスを誘導することが知られているが、メカニズムはまだ明らかではない。これまで、プラズマによって生成される活性酸素種(ROS)が細胞内の酸化ストレスを刺激し、その結果DNA損傷、細胞周期の改変およびアポトーシスを引き起こすことが報告されている。本研究では、Saccharomyces cerevisiaeを用いて、大気圧低温プラズマ処理後のアポトーシス、細胞周期、および生化学的な変化を調べた。アポトーシスおよび細胞周期はフローサイトメトリーで分析し、蛍光染色アッセイを介して細胞内活性酸素種(ROS)およびCa2+濃度、ミトコンドリア膜電位、核DNA形態の変化を観察した。その結果、プラズマにより生成されたROSが細胞内ROSおよびCa2+の蓄積をもたらすことがあきらかとなった。これは、ROSおよびCa2+がミトコンドリア膜電位の脱分極と核DNAの断片化によるG1 arrestに関連するアポトーシスに最終的に寄与することを示した。細胞内Ca2+は、本研究においてプラズマ誘導性アポトーシスのプロセス初期に関与していた。プラズマによるアポトーシス誘導メカニズムに関するこれらの結果は、癌療法に適用されうる有益な知見であり得ると報告した。(紹介者 福田)

  • Szoradi et al. (2018) SHRED is a regulatory cascade that reprograms Ubr1 substrate specificity for enhanced protein quality control during stress. Mol. Cell 70, 1025–1037.ミスフォールディングした変性タンパク質は細胞にとって有害であるため、通常は分子シャペロンによってリフォールディングされたり分解処理にまわされたりする。本論文では、ヒートショックなどのストレス下で蓄積した変性タンパク質が、出芽酵母ではストレス誘導性のタンパク質分解経路(SHRED)で分解されている事、この経路にはRoq1・Ynm3・Ubr1の3つのタンパク質が関わっていることを明らかにしている。ROQ1はプロモーター領域にストレス応答性転写因子Msn2/4 (Verghese et al., 2012)やヒートショックファクターHsf1(Yamamoto et al., 2005)の認識配列を持ち、ストレスによって転写が活性化される。その後、翻訳されたRoq1がエンドペプチダーゼのYnm3によってN末端側から21残基目のロイシンと22残基目のアルギニンの間で切断され、露出したアルギニンがユビキチンリガーゼUbr1のSite 1と結合することで、Ubr1が変性タンパク質をユビキチン化し、分解を誘導するというモデルを著者らは提唱している。しかし、切断されたRoq1がUbr1に変性タンパク質を認識させる機構はまだわかっていない。また、栄養飢餓といったタンパク質の変性を引きこさないような場合でもSHREDが誘導されることから、変性タンパク質の分解以外にも役割を担っていると考えられ、研究の進展が期待される。(紹介者 吉田)

  • Bourke P et al (2017). Microbiological Interactions with Cold Plasma. Journal of applied microbiology. Journal of Applied Microbiology123,308-324. 食品、医療、臨床分野には様々な微生物汚染除去に対する課題がある。低温プラズマ(CP)は、活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)を生成させるツールとして、微生物汚染除去の他、創傷治癒および癌治療のための技術として急速に発展している。本レビューでは、CP技術の基礎の概説や、さまざまな微生物的ターゲットとの相互作用について議論している。CPには、電子、イオン、フリーラジカル、励起状態の原子や分子、UV光子などを含む多数の活性種が共存し、反応種にはO、¹O₂、O₂⁻およびO₃などの反応性酸素種(ROS)とN、N₂(A)、NOなどの反応性窒素種(RNS)があり、湿度が存在する場合には、H₂O⁺、OH⁻、OH・、H₂O₂も生成される。CP媒介性の細菌不活性化の正確なメカニズムは依然として研究中であるが、いくつかの生成物が不活化の役割を果たすことはすでに実証されている。CPの効果は、ガス組成、流速、水分、温度、電圧および周波数など装置に依存する。細菌の細胞壁を通る酸素種または酸素含有ラジカル(酸化窒素)の拡散は、おそらく細胞質膜、タンパク質およびDNA鎖の酸化・損傷を引き起こす。また、活性種は細胞壁の化学結合を破壊し、エッチングによって細胞膜穿孔を引き起こし、細胞内部への浸食と拡散を促進する。この侵食作用はバイオフィルムや胞子、ウイルス、原生生物をも不活化する。対照物の表面特性はCPの殺菌効率に影響を与えるが、処理時間、誘導ガス組成などのいくつかのパラメータの最適化によって改善が可能である。本レビューでは、CPによる糞便サンプル中のノロウイルス、多剤耐性細菌(MRSA)、細菌毒性因子などの不活化効果も紹介されている。(紹介者 福田)

  • Higgins R, Kabbaj MH, Hatcher A, Wang Y (2018)。The absence of specific yeast heat-shock proteins leads to abnormal aggregation and compromised autophagic clearance of mutant Huntingtin proteins. PLOS ONE 13(1): e0191490. 正常型ハンチンチンタンパク質はHTTと表記される。このHTTにCAGリピートが増加してタンパク質内にポリグルタミンが生じると、変異型のHttとなる。Httは伸長したポリグルタミン鎖を持つため、本研究で用いた変異型のハンチンチンタンパク質はHtt103QPと表される。Httのポリグルタミン鎖は他の変性タンパク質と相互作用しやすくなり凝集体を形成する。ヒトではHttの凝集体が脳で形成されハンチントン病の原因となることが知られている(Cell 72, 971–983 (1993))。酵母ではハンチントン病は発症しないが、変性タンパク質が細胞内にとどまることは細胞にとっては害となるため処理機構が備えられている。タンパク質品質管理機構によって変性タンパク質はHsp70やnucleotide exchange factor(NEF)であるSse1、Fes1、Hsp40のco-chaperonであるYdj1によって処理を受けている。Htt103QPの処理も同様にこれらのタンパク質が作用している。Htt103QPを過剰発現させると一細胞あたり一つの凝集体を形成する。しかし変性タンパク質の処理に関わるSse1、Fes1、Ydj1を欠損した株では、Htt103QP凝集体は一つの細胞内に複数形成された。またこれらの欠損株ではHtt103QP凝集体を分解するためのオートファジーが正常に行えなくなり、凝集体が細胞内にとどまり続けることが明らかとなった。(紹介者 白木)

  • D.V.de Felice. et al. (2008) Strains of Aureobasidium pullulans Can Lower Ochratoxin A Contamination in Wine Grapes. The American Phytopathological Society.Vol.98,No. 12,1261-70. オクラトキシンA(OTA)は、主としてAspergillus属(A. ochraceusおよびA. carbonarius)およびPenicillium属(P. verrucosum)によって産生される広範囲に分布するマイコトキシンである。OTAは、7-カルボキシ-5-クロロ-8-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-3R-メチルイソクマリン画分(オクラトキシンα、OTα)とアミノ酸のL-β-フェニルアラニンがカルボキシ-ペプチド結合によって連結した物質で、非常に有毒で発癌性があり、国際がん研究機関では第2B群に分類されている。OTAは、穀物、コーヒー、カカオ豆、スパイス、ドライフルーツ、ビールなどの幅広い食品でも検出されており、ブドウジュースやワインでも検出されている。ワインおよびブドウのOTA汚染は、オクラトキシン生産菌(ochratoxigenic)A. carbonariusが主な原因菌である。本論文では、生物防除剤(BCAs)として4株のAureobasidium pullulans (AU14-3-1、AU18-3B、AU34-2、およびLS30)のOTA分解能を評価し、さらにA. carbonariusによって汚染したワインブドウ果汁に対する効果を検討している。BCAsでの前処理後にA. carbonariusを感染させた果実では、対照のBCAs未処理の果実と比較してOTAの蓄積が抑制された。また、4株のうちの3株がA. carbonariusの感染を有意に防止し、2株は新鮮なブドウでOTAをOTαに分解することが確認された。さらに、2006年の栽培期間中にブドウ園で実施されたLS30株のBCAsとしての評価は、ワインブドウにおける腐敗およびOTA量の両方を減少させる効果的なBCAsであることを示した。しかし、果実でのOTA蓄積抑制のメカニズムなどは、本報告では十分に検討されていない。(紹介者 福田)

  • Peters LZ, Karmon O, David-Kadoch G, Hazan R, Yu T, et al. (2015)The Protein Quality Control Machinery Regulates Its Misassemble Proteasome Subunits.  PLOS Genetics 11(4): e1005178. https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1005178 本論文ではユビキチン化タンパク質を分解する際に集合しなかったプロテアソームのサブユニットが、タンパク質品質管理においてどのような処理を受けるのかを明らかにしている。真核生物の26Sプロテアソームは20S core particle(CP) と2つの19S regulatory particle(RP)から構成されている。今回はRPの構成タンパク質であるRpn5の変異体を用いて研究を行っている。変異体Rpn5ΔCは1塩基挿入により塩基配列の途中にストップコドンがあり、C末端ドメインが野生株よりも34アミノ酸分短くなっている。この変異体を発現する株rpn5∆cは温度感受性を示し、37˚Cで生育できなくなる。細胞内でユビキチン化タンパク質が生じるとプロテアソームのサブユニットが核に集合して、完全なプロテアソームを形成しユビキチン化タンパク質の分解を行う(Subcellular localization, stoichiometry, and protein levels of 26 S proteasome subunits in yeast. Russell SJ, Steger KA, Johnston SA(1999))。しかしrpn5∆cのような変異株では、一部のサブユニットが核に局在せず細胞質に散在するようになる。下図の(ⅰ)のようなsemi-permissive temperature のときにはRpn5ΔC以外の他のサブユニットがプロテアソームを形成し、正常に機能するためタンパク質の分解を行う。このプロテアソームによって細胞質に散在しているRpn5ΔCは分解されると考えられる。一方(ⅱ)のようなrestrictive temperature になるとRpn5ΔC以外の他  のサブユニットも集合することができず、プロテアソームが正常に機能しなくなり分解機構が働かなくなる。この場合、核に集合しなかったプロテアソームのサブユニットが細胞内に散在するのは、細胞にとって害となるため、Hsp42依存的にIPODへと集積されるということが明らかとなった。(紹介者 白木)

  • Guo et al. (2018) Discovering the role of the apolipoprotein gene and the genes in the putative pullulan biosynthesis pathway on the synthesis of pullulan, heavy oil and melanin in Aureobasidium pullulans. World Journal of Microbiology and Biotechnology (2018) 34:11 Aureobasidium pullulansによって生産される、プルラン、油脂、およびメラニンなどの代謝産物は生物工学的に関心を集めている(Chi et al.2009)。プルランは、食品および医薬品産業において様々な用途に用いられている。しかしながら、プルラン生合成機構は依然として不明である。本研究では、プルラン推定生合成経路に関与する遺伝子を過剰発現または欠損させてプルラン、油脂、およびメラニンの生産量への影響を検討した。A.pullulans CBS 110374において、UDPG-ピロホスホリラーゼ遺伝子(UPG)、グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(UGT1、UGT2)、およびα-ホスホグルコースムターゼ遺伝子(PGM)を、別々に過剰発現または欠損させ、プルラン生産に対するその影響について検討した。脂質輸送担体として作用することができるアポリポタンパク質遺伝子(apo)もまた、プルラン生産に対するその影響を調べるために過剰発現または欠損させた。プルラン産生量は、UDPG-ピロホスホリラーゼおよびアポリポタンパク質遺伝子の過剰発現によりそれぞれ16.93%および8.52%増加した。それにもかかわらず、他の遺伝子の過剰発現または欠損は、プルラン生合成にほとんど影響を及ぼさなかった。油脂産生は、UDPG-ピロホスホリラーゼ、α-ホスホグルコースムターゼおよびアポリポタンパク質遺伝子の過剰発現により、それぞれ146.3%、64.81%および33.33%増加した。メラニン産生は、どの遺伝子の影響も受けなかった。これらの結果から、UDPG-ピロホスホリラーゼ遺伝子およびアポリポタンパク質遺伝子は、プルラン生合成に重要であると示唆された。プルラン、油脂、およびメラニンなどの代謝産物間の相互作用メカニズムの解明は、A.pullulansの遺伝子操作による高価値製品への変換にも役立つかもしれない。(紹介者 福田)

  • Hamdan et al.(2017) ER stress causes widespread protein aggregation and prion formation. J Cell Biol ERストレスとは折り畳みがうまくいかずミスフォールドしたタンパク質が小胞体内に蓄積した状態であり、これに対処するためにIre1やHac1を介してUnfolded Protein Response (UPR)が誘導され、変性タンパク質がリフォールディングされたりER-Associated Degradation(ERAD)でユビキチン化され分解される。本論文ではUPRを誘導できない変異株(ire1, hac1, hrd1)では細胞質側でも変性タンパク質の蓄積と凝集体形成が誘導され、さらにプリオンの出現頻度も増加するということを明らかにしている。本研究ではERストレスに対応するUPRやERADの機能が損なわれている変異株(ire1, hac1, hrd1)を用いている。これらの変異株ではERストレスに対応する機構が損なわれているため、ミスフォールドしたタンパク質をERで十分に処理できず、不溶性タンパク質やユビキチン化されたタンパク質レベルが顕著に上昇し、細胞質側でHsp104やSis1と凝集体を形成することが確認された。しかし、変性するタンパク質の種類は野生株でも変異株でも大きな違いは認められなかった。さらに、変異株では変性タンパク質の無秩序な凝集体形成に加え、アミロイド凝集であるプリオンの形成頻度も増加することが明らかとなった。一方、変異株で蓄積した変性タンパク質の凝集体はSis1などのコシャペロンを過剰発現させることで減少した。ER内で生じた変性タンパク質が細胞質側にも拡散し、Sis1などを介して処理されている可能性が示唆された。(紹介者 白木)

  • Jiang et al. (2016) Melanin production by a yeast strain XJ5‑1 of Aureobasidium melanogenum isolated from the Taklimakan desert and its role in the yeast survival in stress environments. Extremophiles. 2016 Jul;20 (4):567-77  砂漠の環境には極端な温度差、水不足、低栄養、強い放射線などの特徴がある。中国のタクラマカン砂漠のような過酷な環境で生存できる微生物の特徴の1つとしてメラニンの産生が挙げられる。本論文は、異なる生態系(タクラマカン砂漠とマングローブ生態系)から分離された同じ種の酵母のメラニン生産の有無とストレス耐性を比較している。タクラマカン砂漠の土壌から分離した酵母株XJ5-1株はAureobasdium melanogenum株であると同定された。XJ5-1株をPDA培地で培養すると大量のメラニンを生産したが、(NH₄)₂SO₄の添加によってメラニンの生成が抑制された。また、メラニンの生合成因子であるPKS遺伝子の発現は、(NH₄)₂SO₄が存在する状態で著しく抑制された。しかし、マングローブ生態系から分離されたA.melanogenum P5株は、(NH₄)₂SO₄の添加にかかわらずメラニンを生産せず、PKS遺伝子の発現にも変化はなかった。XJ5-1株の細胞サイズは、P5株よりはるかに大きかった。XJ5-1株のメラニン化細胞は、同じXJ5-1株の非メラニン化細胞より紫外線、酸化的ストレス (200mM H₂O₂)、熱ショック(40 ℃)、高塩濃度(200g/L NaCl)、乾燥および高温(80 ℃)での強酸処理 (6.0M HCl)に対して、より高い耐性を持っていた。同時に、XJ5-1株のメラニン化細胞は、P5株より紫外線、酸化的ストレス(200mM H₂O₂)、乾燥および高温(80℃)での強酸処理(6.0M HCl)に対して、より高い耐性を持っていた。タクラマカン砂漠の土壌から分離したXJ5-1株の多くの特性が、マングローブ生態系から分離されたP5株のものとは異なることを明らかにした。(紹介者 福田)

  • Shiber et al.(2013)Ubiquitin conjugation triggers misfolded protein sequestration into quality control foci when Hsp70 chaperone levels are limiting. Shiber et al. MBoC in Press (http://www .molbiolcell.org/cgi/doi/10.1091/mbc.E13-01-0010) on May 1, 2013. 本論文では変性タンパク質の品質管理におけるHsp70やHsp42、Hsp40などの役割を検討している。「デグロン」はタンパク質分解・除去を誘導するアミノ酸配列であり、E3リガーゼがそれを認識してユビキチン化を行う。本論文ではNdc10由来のDegABというデグロンに、Doa10というE3リガーゼを反応させて実験を行っている。DegABをもつ基質タンパク質の挙動を解析することにより、Hsp70やHsp42などの分子シャペロンの役割を検証している。Hsp70やコシャペロンであるHsp40は、変性タンパク質を凝集させず可溶化状態に保つという役割を果たしている。激しく変性した変性タンパク質がHsp70とHsp40の作用により不溶化せず可溶化状態が保たれていると、Hsp40とDoa10 E3リガーゼが安定に相互作用しあってユビキチン化とそれに続くプロテアソームでの分解が誘導される(図上部)。逆に、Hsp70のレベルが低い場合には、変性した基質タンパク質の不溶化を十分に阻止することができなくなるとともに(図上中央)、ユビキチン化を介した分解も滞るようになる(図上右)。一方、変性度合いが弱い場合には(図下部)、Hsp40がDoa10 E3リガーゼと相互作用しユビキチン化を誘導する。この場合もユビキチン化された変性タンパク質はHsp70の作用によりプロテアソームに運ばれ分解される。Hsp70が十分に機能しない場合やキャパシティーを超えて変性タンパク質が増えた場合には、Hsp42の働きで細胞内の一部分に凝集体(Q bodyなど)を形成して変性タンパク質が隔離されると考えられている(図下右)。本論文の発表以降、変性タンパク質の凝集体が形成されても、それを脱凝集する機構が報告されている。すなわち、Hsp70がHsp110と複合体を形成し、この複合体によって変性タンパク質をHsp104のcentral channelを通過できるように構造を変化させ、Hsp104による脱凝集作用を受けるという機構である(Kaimal et al. Mol. Cell. Biol. 2017;37:e00027-17)。(紹介者 白木)

 

 

 

 

 

 

  • Khajo et al.(2011)Protection of melanized Cryptococcus neoformans from lethal dose gamma irradiation involves changes in melanin’s chemical structure and paramagnetism. PLoS One.6(9):e25092. メラニンは、チロシン、トリプトファン、およびL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)を含む様々な前駆体の酸化によって形成され、すべての生物の細胞に見出される複雑なポリマーである。ある種の菌類は、チェルノブイリの廃炉を含む高放射能環境でも生存することが出来る。L-DOPAを基質としてメラニンを産生する真菌Cryptococcus neoformansを用いて、ガンマ線がメラニンの化学的特性にどのような影響を与えるかを調べた。溶液中のメラニン化細胞では、ガンマ線(細胞の50〜80%を死滅させる線量)およびXeランプ(紫外線)を照射しても、メラニンラジカルのEPRスペクトル波形に大きな変化は見られなかった。しかし、凍結した細胞懸濁液へのガンマ線照射および液体窒素中で数日間貯蔵したサンプルは、ラジカル集団の減衰および光応答の減少などのメラニンの構造の改変が生じた。これは、メラニンに何らかの損傷が生じたことを示唆している。ガンマ線照射がメラニンの化学構造の変化を引き起こす場合、照射後に可溶性生成物が見出され得る。メラニンの構造的変化を示す証拠として、細胞メラニンおよび無細胞メラニンへガンマ線を照射し、その後に回収した上清中には260nm付近の極大吸収を持つ可溶性生成物が新たに確認された。チオバルビツール酸(TBA)反応性アルデヒドを含むこれらの生成物は、細胞メラニンおよび無細胞メラニンのフェントン試薬処理(酸化的ストレス誘発試薬)によっても生成された。メラニンはまた、ポリマー中のセミキノン部分に金属イオンが結合することで平衡をシフトさせる性質を持つことが報告されている(Felix et al. 1978)。その性質と生理機能との因果関係は明確ではないが、放射線防護に寄与することが示唆されている(Dadachova et al. 2008)。金属(Bi³⁺)結合能に基づくアッセイにおいては、ガンマ線照射後も金属結合能に大きな変化は見られなかった。これらの結果より、C. neoformansの細胞メラニンは、ガンマ線照射により形成されるヒドロキシルラジカルや他の活性種(e⁻aq、CO²⁻・、O²⁻・, H・)により、その化学構造が変化することが強く示唆された。(紹介者 福田)

  • Miller et al. (2015)Compartment-specific aggregases direct distinct nuclear and cytoplasmic aggregate deposition. EMBO J. 2015;34:778-797本論文では変性タンパク質がどのようにして核や細胞質の一部分に集積されるのか(depositを形成するのか)を解明している。このdepositの形成にはHsp42とBtn2という二つの遺伝子が関わっている。

  • 熱ストレスにより細胞質で生じた変性タンパク質はHsp42存在下では細胞質に集められCytoQが形成される。

  • 細胞質で生じた変性タンパク質はSis1の働きにより核内への輸送が誘導され、核内でINQを形成する場合もある。このINQの形成はHsp42非依存的であり、熱ストレスが与えられると発現量が増加するBtn2が関与する。

  • このようにして形成されたCytoQやINQにHsp104が作用し、変性タンパク質が脱凝集されることで、もともとの状態へとリフォールディングされる。

  • 変性タンパク質凝集体は上記のようにdepositを形成することもあるが、depositを形成する前段階で細胞質ではUbr1が、核ではSan1が変性タンパク質をユビキチン化し、プロテアソームによって分解されるという処理機構も存在する。一方、san1∆ubr1∆でもINQ・CytoQは形成されたことから、depositの形成に変性タンパク質のユビキチン化は必要ではないことが示唆された。(紹介者 白木)

 

 

 

 

 

 

  • Dadachova et al. (2007)The radioprotective properties of fungal melanin are a function of its chemical composition, stable radical presence and spatial arrangement.Pigment Cell Melanoma Res. 21; 192–199.メラニン化された微生物は、原子炉冷却プールやチェルノブイリの破壊された原子炉など、バックグラウンドの放射線レベルが非常に高い環境でも生育することが知られている。そのため、放射線防護におけるメラニンの有用性が注目されてきた。本論文では、メラニン化および非メラニン化したヒト病原性真菌Cryptococcus neoformansおよびHistoplasma capsulatumに致死量および半致死量の放射線に曝露し、メラニン化した細胞は高い放射線耐性を持つことを確認している(ヒトにとって致命的である0.005kGyをはるかに上回る8kGyまで照射)。両菌のメラニンはeumelaninとpheomelaninの混合物であり、stable free radicalであるため、傷害性のフリーラジカルをクエンチングする効果を持つと考えられた。一方、イカスミなどに含まれるsepia melaninには防護効果が認められなかった。また、両菌のメラニンは内部に空間を持つ球状構造であるため、コンプトン散乱効果によって放射線のエネルギーを減衰する効果があることが明らかとなった(同量で鉛の約半分の効果を示した)。以上の結果から、微生物におけるメラニンの放射線防護特性が、フリーラジカルのクエンチングと物理的な遮蔽との組み合わせに起因していることが示唆された。*コンプトン散乱は、物質と光子の相互作用を介して生じる現象であり、入射光子の高エネルギーが、次第に低エネルギーの二次光子となる効果である。(紹介者 福田)

  • Kaimal et al.Coordinated Hsp110 and Hsp104 Activities Power Protein Disaggregation in Saccharomyces cerevisiae Mol. Cell. Biol. 2017;37:e00027-17 老化や病気、ストレスなどによって変性したタンパク質は凝集体を形成することが知られている。酵母細胞内では、変性タンパク質にHsp40とHsp70が順に作用して凝集体を形成し、deaggregaseであるHsp104依存的にrefoldingやreactivateされて脱凝集(disaggregation)する。本論文ではこれらの分子シャペロンに加えてHsp110(Sse1/Sse2)も効率的なHsp104-dependent disaggregationに必要であることを報告している。Hsp70が変性タンパク質にリクルートされる際、ATP結合型である必要がある。ヌクレオチド交換活性を持つHsp110の作用により、Hsp70はADP結合型からATP結合型に変換される(下図上部)。このHsp70(ATP)がHsp40との作用を通じてHsp70(ADP)になり、このとき生じるエネルギーによって変性タンパク質へとリクルートされる。こうしてリクルートされたHsp70は凝集体を形成する変性タンパク質に作用して、Hsp104 central channelを通過できるように変性タンパク質の構造を再構築する。再構築された変性タンパク質はHsp104 central channelを通過できるようになり、refoldingやreactivateされて脱凝集が完了する。またHsp110は変性タンパク質に蓄積するHsp70(ADP)をHsp70(ATP)へとリサイクルし、効率的な脱凝集に役立っていると考えられている(下図中段)。今回酵母で発見されたこのメカニズムは、変性タンパク質の蓄積に関連する疾患の治療などにも応用することができるのではないかと考えられた。(紹介者 白木)

 

 

 

 

 

  • Dadachova et al. (2017) Melanin is effective in protecting fast and slow growing fungi from various types of ionizing radiation. Environmental Microbiology.19(4), 1612–1624 メラニンはユニークな物理化学的性質を有する遍在性色素である。メラニン化真菌が持つ電離放射線に対する高い耐性は、放射線防護においてメラニンが重要な役割を果たすことを示唆している。本研究では、メラニン形成が可能な2つの真菌(増殖速度の速い担子菌類のCryptococcus neoformans(CN)と増殖速度の遅い子嚢菌類のCryomyces antarcticus(CA))に対する、重陽子(1.5kGy)とX線(0.3kGy)の効果を検討した。解析の結果、メラニンが生理的条件下で両ストレスに対する耐性獲得において重要であることを確認している。CAはCNより重陽子に耐性があり、X線では両菌ともよく似た耐性が観察された。重陽子照射によって、細胞増殖能を反映するXTT活性は両株のメラニン化細胞で増加したが、非メラニン化細胞ではほとんど変化しなかった。また、MTT活性は、CNの非メラニン化細胞で上昇したが、CAおよびメラニン化細胞ではほとんど変化しなかった。これは、放射線による損傷に応答して細胞の代謝速度を増加させることによるものと考えられた。さらに、メラニン化細胞では重陽子暴露後の細胞内ATPレベルの減少が抑制された。これらの結果は、メラニンが放射線の細胞内への浸透をある程度阻害し、細胞を損傷から保護する能力があることを強く示唆している。本論文は、生理的条件下でメラニンが増殖速度の異なる両真菌を重陽子から保護することを初めて示している。これらの所見は、メラニンベースの放射線防護剤作成の手がかりとなるかもしれない。(紹介者 福田)

  • Zhao et al.(2018) Real-time imaging of yeast cells reveals several distinct mechanisms of curing of the [URE3] prion.JBC Papers in Press 本論文ではUre2タンパク質の酵母プリオンである[URE3]の三つのcureのメカニズムについて解明されている。プリオンはタンパク質性の感染因子であり、自己増殖能を持つ。1つ目はグアニジンによりHsp104の働きを阻害するという方法である。プリオンが伝播されていくためには母細胞から娘細胞にprion seedが輸送されなければならない。Prion seedはアミロイド凝集体のポリペプチド鎖がSis1-Ssa1複合体により構造変化され、その構造変化したポリペプチドにHsp104が結合し切断されることで生じる。このHsp104の働きを阻害してアミロイド凝集体を切断できないようにし、prion seed を生じさせなくすることで、娘細胞へとprion seed輸送されなくなるとプリオンはcureされる。2つ目はBtn2、Hsp42、Cur1、Ydj1の過剰発現によるcureである。これらのタンパク質を過剰発現すると、[URE3]プリオンの原因タンパク質であるUre2は大きな凝集体を形成する。この凝集体形成によりprion seedの数を減らし、個々のprion seedが自己増殖することでおきる伝播の連鎖を防いだり、大きな凝集体であるためbud neckを通り抜けられなくなり母細胞から娘細胞へとprion seedを輸送できなくさせることでプリオンをcureしている。なかでもCur1の過剰発現によるcureにはSis1も関与している。Sis1は前述のようにHsp104のプリオンの切断に必要である。Cur1はSis1と直接結合していることが知られている。Cur1の過剰発現により細胞質中のSis1はCur1と結合し、アミロイド凝集体に結合できなくなるため、Hsp104による切断がおきない。切断されなかったアミロイドがCur1の過剰発現により大きな凝集体を形成し、母細胞に隔離されることでプリオンをcureしていると考えられている。3つ目はDnaJB6の過剰発現によるcureである。DnaJB6が過剰発現するとUre2タンパク質の凝集体は形成されるが、2つ目のメカニズムのときのように大きいものではない。この凝集体はプリオンが完全にcureされるまでは細胞内に消えないで残ったままであるが、完全にcureされると消えたことから、prion seedの可溶化によってプリオンをcureしたと考えられている。(紹介者 白木)

1126Fig7.jpg
hsp104.png
イントロ.jpg
プロテアソーム.png
1216Fig4.jpg
Hsp42.png
bottom of page