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Journal club 2025

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Pal et al. (2022) Eisosome protein Pil1 regulates mitochondrial morphology, mitophagy, and cell death in Saccharomyces cerevisiae. J. Biol. Chem. 298(11) doi: 10.1016/j.jbc.2022.102533.

エイソソームタンパク質のPil1はミトコンドリアの形態とマイトファジーを制御する

エイソソームは真菌細胞の細胞膜に存在する陥入構造であり、Pil1はその主要な構成因子である。先行研究においてPil1はミトコンドリアと関連することが見出されており、著者らはPil1のミトコンドリアにおける機能について解析を行った。mito-mCherryを用いて観察した結果、通常ミトコンドリアはチューブ状で観察されるが、Pil1欠損株では凝集、Pil1過剰発現株では断片化していた。このことから、Pil1はミトコンドリアの形態制御に関与することが明らかになった。また、Pil1欠損株ではマイトファジーの誘導が阻害され、活性酸素種(ROS)の蓄積およびHsp104の凝集が認められた。さらに、野生株と比べてPil1欠損株はストレスを加えない条件下でも生存率やコロニー形成能が低いことが確認された。本研究は、新たにミトコンドリアへの局在が明らかになったタンパク質に着目し、様々な機能との関係が示唆された点で興味深い。一方で、Pil1は主に細胞膜上に局在するが、その欠損や過剰発現の影響については言及がほとんどなく、考察が不十分だと感じた。(紹介者:関本)

Saha and Tomar. (2022) Copper inhibits protein maturation in the secretory pathway by targeting the Sec61 translocon in Saccharomyces cerevisiae. J Biol Chem. Aug;298(8): 102170. DOI: 10.1016/j.jbc.2022.102170.

銅はSec61を標的にし、分泌経路におけるタンパク質の成熟を阻害する

Sec61は小胞体膜に存在するトランスロコンであり、分泌タンパク質のco-translationalおよびpost-translational translocationに関与している。Gas1とCPYは、翻訳後に小胞体内で受ける修飾過程が詳細に解析されてきたモデルタンパク質である。これまでに、銅が分泌タンパク質の糖鎖修飾に影響を与えることが報告されていたが、その分子メカニズムは不明であった。本研究では、銅がSec61を阻害することによって、未成熟な分泌タンパク質が蓄積することを明らかにした。post-translational translocationに依存するGas1およびCPYを用いてプロセシング過程を解析した結果、糖鎖修飾を受けていない前駆体(precursor Gas1, preproCPY)が蓄積することが確認された。さらに、preproCPYは、糖鎖付加を阻害するツニカマイシン処理で蓄積する前駆体(proCPY)よりも分子量が大きいことが示された。加えて、Sec61の発現量が低下しているsec61-DAmPは銅に対する感受性が高まり、一方で4つのアミノ酸が置換されたsec61-22は銅に耐性を示した。これらの結果は、銅がSec61の機能を阻害することを示唆している。本論文では、銅によるSec61の阻害メカニズムの解明には至っておらず、Sec61複合体の安定性や構造変化についてさらなる解析が必要であると考えられた。(紹介者 行方)

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Acharjee et al. (2025)

Boopathy et al. (2023) The ribosome quality control factor Asc1 determines the fate of HSP70 mRNA on and off the ribosome. Nucleic Acids Res. 2023 Jul 7;51(12):6370-6388. doi: 10.1093/nar/gkad338.

RQC因子のAsc1はSSA4 mRNA量を2つの経路で調節する

 Ssa4はHSP70 familyに属するストレス応答性の分子シャペロンである。細胞がストレスから回復するとSSA4 mRNAは急速に分解されるが、その詳細なメカニズムは未解明であった。先行研究で、リボソームの停滞を誘発する低頻度コドンを多く含むmRNAは翻訳開始率が高くなると不安定化することが報告されていた。そこで、著者らはストレスからの回復時にSSA4 mRNAがRQC (Ribosome quality control) 及びそれに続くNGD (No-Go Decay) により分解されるという仮説を立て、検証した。RQC因子であるAsc1やHel2の欠損株や、SSA4 mRNAのコドンを最適化させた株を用いた解析から、低頻度コドンにより生じた衝突リボソームをAsc1が認識し、RQCを活性化して翻訳を制御することが示唆された。さらに、NGD因子の欠損株やDhh1、Xrn1の欠損株を用いた解析から、熱ストレスからの回復時におけるSSA4 mRNAの分解はNGDに非依存的であり、Dhh1、Xrn1を介した経路が担うことが示された。これらの結果をまとめると、SSA4 mRNAの翻訳中にはRQCを活性化して翻訳を制御し、熱ストレスからの回復時にはRQCとは独立したDhh1、Xrn1を介した経路を誘導してSSA4 mRNAを分解するというSSA4の発現における二段階の制御機構が示された。本研究はHsp70 familyのうち、誘導型かつuORFの制御を受けないSSA4に焦点を当てたものである。ストレス応答性遺伝子の発現制御機構にRQCが関与することを明らかにしたことは、ストレス応答を理解するうえで視野を広げてくれる成果である。今後は他のストレス応答性遺伝子への一般性や、さらなるRQC因子の制御メカニズムの解明が期待される。(紹介者:吉山)

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Norris et al. (2021) Mutational analysis of the alpha subunit of eIF2B provides insights into the role of eIF2B bodies in translational control and VWM disease. J Biol Chem. 2021 Jan-Jun:296:100207.  doi: 10.1074/jbc.RA120.014956. 

 翻訳開始とeIF2B GEF活性へのeIF2B body の関与をeIF2Bα 変異を用いた解析により示した

 eIF2B はeIF2Bα, β, γ, δ, εの5つのサブユニットから構成される十量体である。eIF2B はグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として、Ternary complex 構成因子eIF2の再利用に関与する。アミノ酸枯渇等のストレス下では、eIF2α がリン酸化され、コンフォメーション変化したeIF2 とeIF2B の親和性が高まることで、eIF2B のGEF活性が抑制される。酵母細胞ではエネルギー枯渇時にeIF2B が重合して、フィラメント状のeIF2B body を形成することが報告されているが、その機能は未解明である。

本研究ではeIF2Bα への点変異によりeIF2B 複合体の機能を調整し、eIF2B body の局在や翻訳活性、GEF活性への影響を解析した。eIF2B body の構造安定性が低下した変異株(Gcn⁻ 株)では、eIF2B body は形成されず、eIF2α がリン酸化されるアミノ酸枯渇下でもeIF2B の構造変化によってGEF活性が継続されたため翻訳抑制は起こらなかった。eIF2Bの触媒機能が低下した株(Gcd⁻ 株)では、microfoci が形成された。eIF2B body 内のeIF2 のshuttling の低下と対数増殖期におけるGcn4 の発現が認められ、GEF活性の低下が示唆された。また、ヒトのeIF2B への変異はVWM(白質脳症)を引き起こす。著者らはVWMの原因となる哺乳類細胞のeIF2Bα のミスセンス変異を酵母細胞で再現し、その影響を検討したところ、N209Y 変異ではeIF2B body が形成されず、V184D 変異ではmicrofoci が形成されたがGEF活性に顕著な影響はなかった。これらの知見はeIF2B の細胞内局在異常がVWM疾患と関連する可能性を示すが、臨床条件での先行研究同様に遺伝子型と表現型の相関が乏しかった。

本研究では、eIF2B body が翻訳開始を調節する可能性を提示し、その形成と制御機構の解明が今後の鍵となることを示した。(紹介者:寺島)

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Franić et al.(2024) Quiescent cells maintain active degradation-mediated protein quality control requiring proteasome, autophagy, and nucleus-vacuole junctions

J Biol Chem.2025 Jan;301(1):108045. doi:  10.1016/j.jbc.2024.108045. Epub 2024 Nov 29.

静止期細胞は変性タンパク質の分解活性を維持している

26Sプロテアソームは、ユビキチン化された基質タンパク質を選択的に分解する巨大な複合体であり、タンパク質品質管理(PQC)において中心的な役割を担う。出芽酵母では、プロテアソームは対数増殖期には核内に局在しているが、グルコース枯渇下や静止期では局在が変化し、細胞質にプロテアソーム貯蔵顆粒(proteasome storage granules, PSG)を形成することが知られている。しかし、このような代謝状態や細胞内局在の変化を伴う静止期において、PQCがどのように機能しているのかは十分に解明されていない。そこで本研究では、静止期におけるPQCの実態を明らかにすることを目的として、変性タンパク質の分解経路を解析した。

モデル基質として、Gnd1(6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ)のC末端切断変異体であるtGnd1およびstGnd1を用いた。PIR3プロモーターにより静止期にこれらを発現させた結果、いずれも分解されたが、tGnd1は特にユビキチンE3リガーゼUbr1に依存していた。さらに、プロテアソーム活性が低下するrpn11-m1変異株とオートファジー不能変異株(atg1Δ、atg8Δ)を用いて解析したところ、tGnd1の分解はこれらの変異によって阻害され、プロテアソームとオートファジーの双方が分解に関与していることが示唆された。一方、stGnd1はオートファジーに依存せず、主にプロテアソームで分解された。加えて、近年PQCに関与すると報告されている核-液胞接合部(nucleus–vacuole junction, NVJ)の関与を検討したところ、nvj1Δおよびvac8Δ変異株においてtGnd1の分解が低下していた。以上より、静止期においてもPQCは多経路依存的に機能しており、変性タンパク質はプロテアソーム、オートファジー、NVJといった複数の経路を介して選択的に除去されることが明らかとなった。(紹介者 田中)

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Xia et al. (2025) Regulation of Arginine Metabolism and Ethanol Tolerance in Saccharomyces cerevisiae by BTN2. Food Sci Nutr. 2025 May 1;13(5):e70244. 

Btn2によるアルギニン代謝の制御

カルバミン酸エチル(EC)は、主に尿素とエタノールの反応によって生成され、発酵アルコール飲料にも含まれる発がん性物質である。尿素は出芽酵母によって産生されるアルギニン代謝産物である。これまでの研究で、Btn2がアルギニン代謝に影響を及ぼすことが複数報告されている。本研究では、著者らはアルギニン代謝経路の主要代謝物、酵素活性に対するBtn2改変株の影響を比較し、エタノールストレス下での細胞増殖を評価した。その結果、BTN2ノックアウト株はアルギニン摂取を抑制し、尿素減少を促進することが明らかになった。qRT- PCRの結果、Btn2はGAP1、CAN1、CAR1、DUR1,2の発現を調節することにより、アルギニンの輸送、異化、尿素分解を制御していることが示された。さらに、Btn2がエタノール耐性を増強し、細胞障害を緩和することも示された。著者らは、これらの知見が、出芽酵母によるアルギニンの取り込み、ひいてはワイン中の尿素蓄積を減少させる手段の発見につながるとしている。しかし、本論文では研究に使用された株の遺伝的背景などの情報が適切に記載されていない上、根拠の不明確な主張が見られた。

溶液中のアミノ酸には様々な条件下において変性タンパク質の凝集を防ぐはたらきがあり、なかでもアルギニンは凝集防止の効果が最も高いことが知られている (Shiraki et al., 2002)。仮にBtn2がアルギニンの取り込みに関与していた場合、ストレス下におけるBTN2の発現誘導は、間接的に変性タンパク質の凝集防止に寄与しているかもしれない。

(紹介者:樋口)

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Watson et al. (2023) Macromolecular condensation buffers intracellular water potential. Nature. Nov;623(7988):842-852. doi: 10.1038/s41586-023-06626-z.

生体分子凝縮は細胞内の水利用可能性に生じた擾乱を緩衝する

水分子は、細胞内における高分子の溶解やタンパク質の適切な折りたたみに不可欠な存在である。タンパク質の折りたたみや活性は水の利用可能性に大きく依存しているが、一方で高分子の水和は水分子の自由な運動を制限し、水の総力学的ポテンシャルエネルギー(水ポテンシャル)を低下させる。著者らはまず、細胞質のような高濃度高分子溶液において、温度のわずかな変化によってタンパク質表面の構造水量が変化し、それが水ポテンシャルに大きな影響を及ぼすことを発見した。また、温度変化による水ポテンシャルの変動は、浸透圧変化に起因する逆方向の水ポテンシャル変化によって相殺されることも明らかとなった。細胞は、温度や浸透圧の変化に伴う秒単位の水ポテンシャルの変動に迅速に対応する必要があるが、既知の水恒常性維持メカニズムはその応答速度が比較的遅い。そこで著者らは、水ポテンシャルの急速な変化を緩衝する機構が存在するとの仮説を立て、天然変性領域(intrinsically disordered region, IDR)を有するタンパク質による水ポテンシャル駆動型の生体分子凝縮が、この機能を担っていることを見出した。この凝縮過程においては、タンパク質表面の水和水の一部が解放され、水ポテンシャルの変化が緩和されると考えられる。さらに、この緩衝機能は、プロテオームの変化やタンパク質のリン酸化状態による長期的な適応応答が発動するまでの、短期的な調整機構として機能していることが示唆された。

本論文は、温度や浸透圧の急激な変動に対する生体分子凝縮の機構とその意義を、水の熱力学的視点、特に高分子溶液中における自由水と構造水の比率に与える温度の影響を考慮することで、包括的にモデル化している。このモデルが、他のストレス条件において誘導される生体分子凝縮にも適用可能かどうかは、今後の検討課題である。(紹介者:船橋)

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Pedro and Stone, (2023)

Richard S. Marshall et al. (2022) A trio of ubiquitin ligases sequentially drives ubiquitylation and autophagic degradation of dysfunctional yeast proteasomes. Cell Rep. 2022 Mar 15;38(11):110535. doi: 10.1016/j.celrep.2022.110535.

酵母プロテアソームの液胞移行にはユビキチン化活性が必要

通常、酵母のプロテアソームは主に核に局在しているが、プロテアソーム阻害剤であるMG132存在下では核から液胞に移行する過程で一時的に細胞質に凝縮体を形成する。著者らの以前の研究で、機能不全となったプロテアソームはユビキチン化されオートファジーを介して分解されることが示唆された(Marshall et al., 2016)。本論文では、プロテアソームのユビキチン化とオートファジーでの分解機構について解析した。ユビキチン化酵素(E1, E2, E3)をそれぞれ欠失させ、MG132存在下でのプロテアソームの局在変化を観察した結果、適切にユビキチン化が起こらなかった場合にはプロテアソームの局在変化がみられなかった。特に酵母のE3であるSan1,Hul5,Rsp5を欠損または変異させた場合、プロテアソームのユビキチン化が著しく抑制され、san1∆hul5∆二重欠損株ではユビキチン化が認められず、プロテアソームの局在変化もオートファジーによる分解も生じなかった。以上の結果から、機能不全のプロテアソームの液胞移行には、ユビキチン化活性が重要な鍵を握っていることが示唆された。(紹介者:今城)

Crabtree. et al.(2023) Ion binding with charge inversion combined with screening modulates DEAD box helicase phase transitions. Cell Rep. 42(11) doi: 10.1016/j.celrep.2023.113375

Ddx4の負に帯電したアミノ酸残基へのCa²⁺の結合がDdx4凝縮体の形成を促進する 

   液液相分離(LLPS)によって形成される生態分子凝縮体は、pH、温度、塩濃度などの変化に影響を受ける。Na⁺やCa²⁺などのイオンは生体内で様々な役割を持つが、LLPSにより凝縮する天然変性領域(IDR)に与える影響はまだあまり解明されていない。著者らはまず、哺乳類のDEAD-boxファミリータンパク質のATP依存性RNA helicaseであるDdx4タンパク質のN末端IDR:Ddx4N1を用いて、in vitroで凝縮体の安定性を評価した。その結果、Ca²⁺の添加により、凝縮体が安定化することを見出した。それに対して、Na⁺をイオン強度が等しくなるように加えた場合には安定化は見られなかったことから、Ca²⁺の添加は塩による静電遮蔽効果とは別の影響を与えることが示唆された。核磁気共鳴分光法(NMR)による構造解析と、Ca²⁺の結合の強さの解析から、Ddx4N1の負に帯電した残基にCa²⁺が独立して結合し、Ddx4N1の正味電荷が増加し、凝縮体の安定性が大きくなることが示唆された。また、Ca²⁺の結合による凝縮体の性質の変化を調べた結果、Ca²⁺の添加による電荷の変化は、凝縮体の流動性や表面の性質、分子の選択的な取り込みに影響を与えることが示された。HeLa細胞を用いたin vivoでの解析からも、電荷が大きいタンパク質ほど凝縮体の安定性が増加するという in vitroと同様の傾向が確認された。本論文では、Ca²⁺がDdx4タンパク質の負に帯電した残基に結合し、局所的な電荷の反転を介してタンパク質の正味電荷を変化させることで、相分離を促進することが明らかになった。今後、様々な分子が存在する細胞内での影響のより詳細な解析が必要とされるが、Ca²⁺をはじめとする多価カチオンの結合は、LLPSによる生体分子凝縮体の形成を制御する重要な要素の一つになり得ると考えられる。(紹介者:関本)

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Halbleib et al. (2017) Activation of the Unfolded Protein Response by Lipid Bilayer Stress. Mol Cell. 67 (4): 673-684. DOI: 10.1016/j.molcel.2017.06.012.

脂質二重層のストレスによる小胞体ストレス応答の活性化

小胞体ストレス応答(UPR)は、小胞体内における変性タンパク質の蓄積と小胞体膜の脂質異常によって引き起こされる。UPRのセンサーであるIre1は、小胞体内腔ドメインIF1およびIF2を介して多量体を形成することで活性化され、転写因子HAC1 mRNAのスプライシングを誘導し、UPR標的遺伝子の発現を促進する。Ire1は、変性タンパク質との結合およびKAR2との解離により変性タンパク質の蓄積を感知すると考えられている(Promlek et al.)。しかし、脂質膜の異常を感知するメカニズムは明らかではない。本研究では、膜貫通ドメインに隣接する両親媒性ヘリックス(AH)に注目し、Ire1の活性化機構を解析した。まず、AHの物理化学的性質を改変する変異を導入したところ、Ire1の活性が低下した。さらに、IF1およびIF2の変異と組み合わせることで、その活性は相加的に低下した。次に、脂質密度の異なるリポソームにIre1のAHと膜貫通ドメインから成るセンサーペプチドを再構成した系を用い、連続波電子常磁性共鳴(cwEPR)分光法および分子動力学(MD)シミュレーションにより構造と動態を解析した。その結果、脂質密度の高い膜ではIre1のセンサードメインがダイマー化しやすくなることが示唆された。さらに、MDシミュレーションにより、AHの両親媒性がセンサードメインの膜への挿入に重要であり、Ire1が脂質膜を局所的に圧縮し、その際に発生するエネルギーコストを最小化するためにダイマー化するというモデルが提唱された。著者らは、脂質密度が高い膜ほどIre1同士が接近する時間が長くなり、IF1とIF2を介した多量体を形成しやすくなると考えている。本研究は、Ire1が脂質膜の異常に応答するメカニズムを理論的に説明した点において意義深く、今後、試薬処理による脂質膜の異常とUPRの関連性を明らかにする研究の発展が期待される。

 Promlek et al. (2011) Membrane aberrancy and unfolded proteins activate the endoplasmic reticulum stress sensor Ire1 in different ways. MBoC. 22 (18): 3520-3532. DOI: 10.1091/mbc.E11-04-0295.

(紹介者 行方)

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Matsuki, Y et al(2020) Ribosomal protein S7 ubiquitination during ER stress in yeast is associated with selective mRNA translation and stress outcome. Sci Rep 10, 19669 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-76239-3

リボソームタンパク質eS7のモノユビキチン化がERストレス時における選択的翻訳に関与する。

出芽酵母では、ERストレスを受けるとIre1が活性化してHAC1 mRNAをスプライシングする。これにより小胞体ストレス応答(UPR)標的遺伝子の発現を誘導する転写因子であるHac1が産生される。Aspergillus fumigatusではUPRが翻訳制御を誘導すると考えられているが、Saccharomyces cerevisiaeではUPRに応答した翻訳制御は明らかになっていない。一方、リボソームタンパク質のユビキチン化はNo-Go Decay (NGD)やRibosome-associated Quality Control (RQC)のほか、酸化的ストレスに対する応答にも関与していることが報告されている。本論文ではUPRにおけるリボソームタンパク質のユビキチン化の意義について研究した。not4Δ株を用いた解析の結果、UPR誘発条件下ではリボソームタンパク質eS7がユビキチンリガーゼであるNot4によりモノユビキチン化され、この修飾がERストレス下での生存に重要であることが明らかになった。また、リボソームプロファイリングにより、モノユビキチン化されたeS7を含むリボソームが、スプライシングされたHAC1 mRNAの翻訳を活発に行っていることがわかった。さらに、UPR時におけるeS7のモノユビキチン化には、脱ユビキチン化酵素であるUbp3のIre1-Hac1経路非依存的な発現低下が関与していた。これらの結果から、UPRが起こる条件では、Ire1-Hac1経路とは独立した経路でモノユビキチン化されたeS7を持つリボソームが、mRNAの選択的な翻訳を行っていることが示された。本論文では、リボソームがどのようにしてmRNAを選択しているのかについては議論されていなかったため、今後ユビキチン化されたリボソームの構造的・機能的な解析が進められていることを期待する。

(紹介者 吉山)

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Ana C. Matias et al.(2022) Hsp70 and Hsp110 Chaperones Promote Early Steps of

Proteasome Assembly.  Biomolecules. 2022 Dec 21;13(1):11. doi: 10.3390/biom13010011

Hsp70/Hsp110によりプロテアソームαリングを含む中間体が形成される。

26Sプロテアソームは、ユビキチン化基質の認識と展開を担う調節粒子(RP)と、分解活性を有するコア粒子(CP)から構成される巨大なタンパク質複合体であり、計33種のサブユニットから形成される。CPは7種のサブユニットからなるαおよびβリングで構成されており、その組み立ては真核生物において、Ump1、Pba1-Pba2、Pba3-Pba4などの専用シャペロンに依存することが知られている。哺乳類では、CP組み立ての初期にα7量体リングが形成され、これを鋳型としてβ1〜6が取り込まれ15S前駆体複合体(15S PC)を形成し、最終的にβ7の取り込みと2量体化を経て成熟したCPとなる。この15S PCから20S CPを組み立てる流れは種を超えて保存されているが、各サブユニットから15S PCまでの組み立て経路はさまざまである。

本研究では、出芽酵母において、CP組み立ての初期段階にα1、α2、α4がそれぞれ独立して小型複合体を形成することを見出した。さらにこれらの複合体には、分子シャペロンHsp70(Ssa1/2)およびそのヌクレオチド交換因子であるHsp110(Sse1/2)が含まれていることを、質量分析により明らかにした。ゲル濾過とSDS-PAGE解析により、これらの小型複合体の存在は確認されたが、哺乳類に見られるα7量体は検出されなかった。また、sse1Δやssa1Δなどのシングルノックアウト株ではこれらの複合体の形成が阻害されることから、Hsp70/Hsp110シャペロンが複合体形成に必須であることが示唆された。さらに、sse1Δとump1Δまたはpba3Δとの二重欠損株では、成長阻害やαサブユニットを含む中間体の蓄積が観察された。

これらの結果から、Hsp70およびHsp110はCP組み立ての初期において、特定のαサブユニットを保持・安定化させ、正しい複合体形成と組み立ての効率化に寄与していると考えられる。

(紹介者 田中)

Das et al., (2025) Spatial mechanisms of quality control during chaperone-mediated assembly of the proteasome. Nat Commun. 2025 Apr 9;16(1):3358.

プロテアソーム組み立て中間体の空間的な品質管理機構

プロテアソームは細胞内のタンパク質の分解を担う巨大な複合体である。プロテアソームを構成するサブユニットは33種類にも及び、その組み立てには専用のシャペロンが必要である。プロテアソームの組み立ては、単にサブユニット同士を結合するだけでなく、各ステップが精査され、正しく組み立てられている中間体だけがプロテアソームとなる可能性があることが、最近の研究で示唆されている。今回著者らは、19S RP (Regulatory Particle)の組み立てに関与する4種類のシャペロン (Nas2, Nas6, Rpn14, Hsm3)に注目し、プロテアソームを組み立てる際の品質管理(Quality Control)機構を見出した。この機構は、19S RPのサブユニットであるRpt2の核局在化シグナル (NLS)を介して欠陥のあるプロテアソームの中間体を核内に隔離し、正しいプロテアソームの組み立てを促進することが分かった。また、このNLSは進化的に保存されており、出芽酵母からヒトまで幅広い生物種が保持している。しかし、プロテアソームそのものの核への局在化にはRpt2のNLSは不要であり、プロテアソームの品質管理にのみ役割を果たしている。更に、プロテアソームが組み立てられる間、その組み立てが正しく行われているかどうかは継続的にモニターされており、組み立てに欠陥のある中間体はその都度核内へ隔離される。著者らは、この発見をプロテアソームの制御における20年来の謎を解明するものであるとしている。しかし、組み立て不良のプロテアソームと、それに付随するシャペロンだけが核内に隔離されていることを示す顕微鏡観察によるデータは著者らの行った実験の中にはない。そのため、著者らの提唱するモデルの是非については更なる研究が必要であると思われる。 (紹介者:樋口)

Gea Cereghetti et al. (2021) Reversible amyloids of pyruvate kinase couple cell metabolism and stress granule disassembly. Nat Cell Biol. 23(10):1085-1094. doi: 10.1038/s41556-021-00760-4.

FBPレベルの上昇によるCdc19アミロイドの分解が細胞代謝とSGの制御を結び付ける

細胞はストレスに応答して翻訳を停止し、mRNAや翻訳に関連するタンパク質をストレス顆粒 (SG) に隔離する。ストレス回復時にはSGの速やかな解消が必要とされるが、その分子メカニズムはまだ十分に解明されていない。本研究では、解糖系のピルビン酸キナーゼであるCdc19が熱ストレス下で不活性なアミロイドを形成し、SGに局在することを明らかにした。また、ストレス下で不可逆的なアミロイドを形成する変異体 (Cdc19irrev) を用いた解析から、ストレス回復時のアミロイドの迅速な再可溶化がSGの解消、ATPの生産、細胞増殖の再開に重要であることを示した。Cdc19の活性は解糖系代謝産物のフルクトース-1,6-ビスリン酸 (FBP) の結合によりアロステリックに制御されているが、Cdc19へのFBPの結合がCdc19アミロイドの再可溶化にも関与していることが示唆された。加えて、SGの効率的な解消にはATP依存的なシャペロンであるHsp70やHSP104が寄与しているが、FBPが結合できないCdc19irrev変異体を持つ細胞ではこれらのシャペロンがSGにリクルートできなかったことから、シャペロンのリクルートにもCdc19へのFBPの結合が必要であることが示された。

本研究はCdc19へのFBPの結合を介したCdc19アミロイドの制御が細胞代謝とSGのダイナミクスを結び付けるメカニズムとして興味深いが、細胞内のATPレベルやHsp104のリクルートについてはさらなる解析が必要であると考えられる。(紹介者:船橋)

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Shu, W et al. (2020). Rph1 coordinates transcription of ribosomal protein genes and ribosomal RNAs to control cell growth under nutrient stress conditions. Nucleic Acids Res., 48(15), 8360–8373. doi: 10.1093/nar/gkaa558.

Rph1のRNAポリメラーゼを介した転写の調節が細胞の生長を制御する

リボソームの生合成には多くのエネルギーを必要とするため、栄養枯渇条件下ではこの生合成を適切に制御する必要がある。そのため、rRNAとリボソームタンパク質遺伝子 (RPG) の転写を調節することはストレス下での細胞の生存にとって重要である。Rph1は窒素飢餓条件下におけるオートファジー関連遺伝子の発現の制御に関わる転写因子であることが報告されていた。本論文では窒素飢餓条件下とラパマイシン処理で、Rph1を介したリボソーム生合成の制御が行われるのか検討した。ChIP解析により、RNA PolⅠ、RNA PolⅡがそれぞれ転写を行うrRNAやRPGの転写領域にRph1が広く結合しており、ラパマイシン処理時にはこれらの領域から遊離することが確認された。このRph1の遊離は、ラパマイシン存在下でTORC1が阻害されることでリン酸化されたRim15によってRph1がリン酸化されることで引き起こされることが明らかとなった。また、ラパマイシン存在下で、Rph1欠損株は野生株に比べてrRNAやRPGの転写量が増加し、生育も良くなることがわかった。これらの結果から、Rph1は転写領域に結合することで異なるRNAポリメラーゼによるリボソーム関連遺伝子の転写を同時に抑制し、TORC1阻害時にはクロマチンから離れて抑制が解除されることが示唆された。著者らは、Rph1が転写領域に結合することでリボソーム生合成を抑制し、TORC1阻害時では一部を残してRph1がリン酸化されて遊離することで最低限のリボソームを合成でき、細胞の生存につながると考えている。本論文に加えて、栄養枯渇及びラパマイシン存在下における細胞の長期的な生存率の変化をRph1欠損株と野生株で比較し、野生株の方が細胞の生存が維持される結果が得られれば著者らの考えをより強化できると考えられる。(紹介者:吉山)

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Noritaka Ohigashi et al.(2025) Vacuolar Sts1 Degradation-Induced Cytoplasmic Proteasome Translocation Restores Cell Proliferation. Genes Cells2025 Mar;30(2):e70004.doi: 10.1111/gtc.70004.

プロテアソームの細胞質移行はSts1の局在変化によって制御される

26Sプロテアソームはポリユビキチン化タンパク質を選択的に分解することで様々な細胞内プロセスを制御している複合体である。プロテアソームは対数増殖期には核内に局在しているが定常期になると細胞質へ移行しProteasome Storage Granules (PSG)を形成する。先行研究よりプロテアソームの核への局在はSts1が制御していることが報告されている。

Sts1はnuclear localization signals(NLS)を含み、核輸送因子カリオフェリンと26Sプロテアソームのアダプターとして働いている。またプロテアソームの細胞質転移の制御因子として同定されていたHul5はHECT型ユビキチンリガーゼ(E3)であり、K48、K69、K29結合ポリユビキチン鎖の形成を触媒する。本研究では定常期にSts1がHul5のE3活性依存的に液胞に隔離され、プロテアソームが細胞質へ移行することを明らかにした。またその際、Sts1はユビキチン化されていないことも明らかにした。

定常期に入ったhul5Δ株とE3不活性型変異hul5 C878A株ではプロテアソームは核内に局在した。しかしhul5ΔとSts1不活化する変異sts1-2 (C194Y)の二重変異株ではプロテアソームは細胞質にとどまっていた。また定常期においてWTではSts1-GFPは液胞に隔離されるのに対し、hul5Δとhul5 C878Aでは細胞内全体に拡散していた。さらに、定常期に入った細胞でSts1を過剰発現させるとSts1は核内に局在し、プロテアソームも核内に局在していた。以上のことからHul5は定常期になるとSts1をE3活性依存的に液胞に隔離することでプロテアソームの局在を制御していることが示唆された。

定常期でもプロテアソームが核内に局在している株ではユビキチン化タンパク質の凝集増加、ミトコンドリア膜電位の低下、プロテオトキシックストレスからの増殖再開機能の遅延が確認され、これらの結果を基にPSG形成の生理的意義を著者らは考察している。本研究でHul5がSts1の液胞隔離を制御していることが明らかになったが、Sts1は定常期でユビキチン化されていないことも著者らは確認している。著者らはよりプロテアソームの局在変化のメカニズムを理解するためにはHul5の標的の解明が不可欠であると考えている。

(紹介者:田中)

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Li et al. (2024) Bidirectional substrate shuttling between the 26S proteasome and the Cdc48 ATPase promotes protein degradation. Mol Cell. 84 (7): 1290-1303. doi: 10.1016/j.molcel.2024.01.029.

26SプロテアソームとCdc48 ATPアーゼの間における基質の輸送はタンパク質の分解を促進する

ポリユビキチン化されたタンパク質はCdc48によってアンフォールディングされた後、シャトルタンパク質によりプロテアソームに運ばれ、分解される。Ubx5は、ubiquitin-asssiataed (UBA) domain とCdc48-interacting ubiquitin regulatory X (UBX) domainを含むUBA-UBXタンパク質の一つであり、Cdc48への基質のリクルートとその活性の制御に関わっている。シャトルタンパク質のRad23とDsk2はタンパク質の分解を促進することが知られていたが、その詳細なメカニズムは理解されていなかった。筆者らは、in vitroでタンパク質の分解系を再構築し、シャトルタンパク質やUBA-UBXタンパク質を加えた際の分解効率の変化、および基質とその分解に関連するタンパク質との相互作用を調べた。その結果、Rad23とUbx5が特定の濃度で存在すると基質の分解が促進され、それぞれのタンパク質の有無に応じて、基質がプロテアソームとCdc48の間を移動することが分かった。これにより、Rad23とUbx5はプロテアソームとCdc48の間で基質を双方向に輸送し、タンパク質のアンフォールディングと分解の効率を高めていることが示唆された。さらに、この結果は過剰発現株と欠損株を用いたin vivoの実験でも適用された。本研究は、シャトルタンパク質とUBA-UBXタンパク質がどのようにタンパク質の分解を促進するのかを示唆する重要なものである。さらに、分解過程でアンフォールディングが必要と推測されるタンパク質が同定されたことで、今後、このデータを用いたin silicoでの解析により、タンパク質の構造に応じた分解機構の理解が進むことが期待される。(紹介者:行方)

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Boncella et al. (2020) Composition-based prediction and rational manipulation of prion-like domain recruitment to stress granules. Proc Natl Acad Sci USA. 117(11):5826-5835. doi:10.1073/pnas.1912723117

ストレス顆粒へのプリオン様ドメイン導入はアミノ酸組成に基づいて決定される

プリオン様ドメイン(PrLD)は天然変性領域(IDR)の一種であり、酵母のプリオンドメインに組成的に類似した、Q/N(グルタミン/アスパラギン)を豊富にに含むドメインである。ストレス顆粒に局在する多くのRNA結合タンパク質にPrLDが含まれることが知られている。本論文では、酵母のタンパク質に含まれるPrLDに注目し、35種類のタンパク質中のPrLDの凝集と凝集しやすいPrLDの特徴について解析を行った。46℃の熱ストレス条件下で凝集した(>60% of cells)PrLDとそうでないPrLDのアミノ酸組成を比較すると、凝集したPrLDは荷電したアミノ酸、疎水性アミノ酸の割合が大きく、極性アミノ酸の割合が小さいことが明らかになった。また、このようなアミノ酸組成の偏りから、アミノ酸組成に基づいてPrLDの凝集を予測するモデルを考案した。このモデルでは、ストレス誘導性のPrLDの凝集体形成を従来のプリオン予測アルゴリズムよりも高い正確性で予測することができた。また、このモデルに基づいて、アミノ酸置換による凝集の制御や、人工的に凝集の有無をコントロールしたPrLDの合成を行うことができた。さらに、PrLDの凝集体はストレス顆粒因子であるPab1と共局在していたことと、アミノ酸配列をランダムに入れ替えたPrLDで凝集の有無は変化しなかったことから、PrLDのストレス顆粒へのリクルートはアミノ酸組成によって決められていることが示唆された。しかし、これらの特徴や予測モデルの精度は全てPrLDに限定的である。PrLDの組成がタンパク質全体やその凝集にどの程度影響するのかは不明であるため、今回の結果を足掛かりに解析が進むことが期待される。(紹介者:関本)

Mochida K et al. (2020) Super-assembly of ER-phagy receptor Atg40 induces local ER remodeling at contacts with forming autophagosomal membranes. Nat Commun. 11(1):3306. doi: 10.1038/s41467-020-17163-y.

ERファジーレセプターAtg40は多量体化して小胞体の折り畳みを誘導する

栄養枯渇下では小胞体(ER)やミトコンドリアといったオルガネラが選択的オートファジーの対象になる。選択的オートファジーでは各標的上にレセプタータンパク質が局在化し、隔離膜上のAtg8と相互作用することでオートファゴソームへ効率的に隔離される。これまでにERファジーのレセプタータンパク質としてAtg39とAtg40が同定されたが、ERファジーの機構については不明な点が多い。本論文ではERファジーにおけるAtg40の機能について解析した。まず、Atg40の疎水性領域にはヘアピン構造を持つことから、レティキュロン様ドメインを持つことが推定された。レティキュロンタンパク質であるYop1、Rtn1、Rtn2の三重欠損株で見られたERの異常なシート状構造の異常がAtg40の過剰発現により解消されたことから、Atg40はER膜を折り曲げる機能を持つことが示唆された。次に、ラパマイシン処理時にAtg40はAtg8と共局在し、foci形成時に同じ速度で輝度が増加したことからオートファゴソームの形成とAtg40の凝集が同時に起こることが示された。そして、人為的にAtg8を凝集させAtg40の凝集を誘導するとYop1がfociに共局在したことから、オートファゴソーム内ではERが高度に折り畳まれていることが示された。これらの結果から、Atg40はAtg8と相互作用して凝集することでERの折り畳みを促進する機能を持つことが明らかになった。(紹介者:清水)

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Peyman P. Aryanpur et al. (2022) The RNA Helicase Ded1 Regulates Translation and Granule Formation during Multiple Phases of Cellular Stress Responses. Mol Cell Biol. 42(1):e0024421. doi: 10.1128/MCB.00244-21.Epub 2021 Nov 1.

Ded1は適切なストレス応答に重要である。

Ded1は翻訳開始前複合体(PIC)の構成因子であり、mRNAの5′-末端から開始コドンに達するまでのスキャニングにおいて、RNA helicaseとしてmRNAの2次構造解消を担っている。また、さまざまなストレス下でDed1が液液相分離してストレス顆粒(SG)に隔離されることが知られており、ヒートショック下ではSGへのDed1の隔離がハウスキーピングmRNAの翻訳抑制を引き起こすと報告されている。著者らはこれまでに、TORC1阻害下でDed1がeIF4G1をPICから引き抜き、共に分解されることで翻訳抑制が誘導されるという、新たなモデルを提唱した。本論文ではDed1自身のオリゴマー化とeIF4G1との結合に関わるC末端領域を欠失したded1-ΔCTを用い、DED1の過剰発現と酸化ストレスへの応答を調べた。ded1-ΔCTは過剰発現時にSGを形成せず、増殖抑制を緩和させた。また、ded1-ΔCT株とΔtif4631(eIF4G1欠損)株は野生株と比べて酸化ストレスへの適応に時間を要することを明らかにした。著者らは、酵母のストレス応答におけるDed1のC末端領域の重要性を再確認し、ストレスへの初期応答や適応段階、およびストレスからの回復段階などの複数の段階で、Ded1が重要な役割を担うと結論付けた。(紹介者:寺島)

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Jianhui Li et al. (2019) AMPK regulates ESCRT-dependent microautophagy of proteasomes concomitant with proteasome storage granule assembly during glucose starvation. PLoS Genet. 2019 Nov 18;15(11): e1008387. doi: 10.1371/journal.pgen.1008387.

AMPKはグルコース枯渇中にESCRT依存性のプロテアソームのミクロオートファジーをPSGのアッセンブリーと同時に制御する

 

AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、ヒトから酵母まで真核細胞に高度に保存されているセリン・スレオニンキナーゼであり、通常は細胞内エネルギーの低下に応答して活性化される。一方、Endosomal Sorting Complex Required for Transport complex (ESCRT)は酵母のmulti-vesicular body (MVB)の形成に関与するタンパク質群である。また、酵母のプロテアソームは炭素源枯渇条件下で細胞質にProteasome Storage Granules (PSG)を形成することが知られている。さらに、窒素飢餓条件では、プロテアソームがオートファジーによって分解(プロテアファジー)されることも報告されている。PSGの生理的意義については、プロテアファジーからの回避が一説として考えられているが、詳細は未解明であり、その細胞内制御機構も十分に明らかになっていない。

これまでの研究では、プロテアファジーは主に古典的なマクロオートファジーによって生じると考えられてきた。この論文ではAMPKが、ESCRT依存的にaberrantなプロテアソームのミクロオートファジーを誘導することを明らかにした。低グルコース条件下でプロテアファジーをimmunoblot法で解析した結果、AMPK変異体 (snf1∆・snf4∆)ではプロテアファジーが完全に阻害された。一方、ESCRT変異体 (vps mutants)では、一部の条件下でのみプロテアファジーが生じることが確認された。酵母では液胞でのタンパク質の輸送および分解にESCRT依存的なミクロオートファジーが関与することが知られており、ミクロオートファジーの標的として報告されているVph1の分解についてimmunoblot法で解析を行った。その結果、窒素飢餓条件下では、Vph1の分解にAMPKは必要とされないが、ESCRT機構は必要であった。窒素飢餓下のプロテアファジーにも同様にAMPKは必要なかったことに基づき、著者らは低グルコース条件下におけるプロテアファジーは、ESCRT依存的なミクロオートファジーによるものであると結論付けている。ただし、Vph1の分解とプロテアファジーとの関連性を裏付けるさらなる証拠が必要である。これらの結果は、低グルコース条件下でのプロテアファジーがESCRT依存的なミクロオートファジーに起因していることを示唆している。(紹介者:今城)

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