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JOURNAL CLUB​​​

Journal club 2026

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Omkar et al. (2025) Mechanosensor-mediated Hsp70 phosphorylation orchestrates the landscape of the heat shock response. Nat Commun. 17, 507. DOI: 10.1038/s41467-025-67204-7.

CWI経路を介した酵母Hsp70のリン酸化は、Hsf1を活性化し迅速な熱ショック応答を誘導する

細胞は熱ストレス時のタンパク質恒常性を維持するために熱ショック応答(Heat Shock Response: HSR)を誘導する。酵母細胞では、転写因子Hsf1は通常、分子シャペロンHsp70と結合して不活性に保たれている。一方、熱ストレスを受けるとミスフォールドしたタンパク質が蓄積し、それらへの対処のためにHsp70がHsf1から解離することで、Hsf1がHSP遺伝子群の転写を活性化する。この「シャペロン滴定モデル」は広く受け入れられているが、Hsf1が非常に短時間で活性化される現象を十分に説明できないという課題があった。

著者らは、酵母細胞質Hsp70であるSsa1のT492残基のリン酸化に着目し、Ssa1-T492リン酸化抗体やリン酸化を受けない変異体(ssa1-T492A)を用いて解析を行った。その結果、熱ショック時にはメカノセンサーMid2を起点とするCWI(Cell Wall Integrity)経路が活性化され、Pkc1キナーゼによってSsa1-T492がリン酸化されることを示した。このリン酸化によりHsp70がHsf1から解離し、Hsf1が迅速に活性化されることを明らかにした。さらに、Ssa1-T492のリン酸化は、Pkc1下流のBck1キナーゼの安定化を介してCWIシグナル伝達そのものにも影響する可能性が示された。また、野生型(WT)とssa1-T492A変異体のSsa1エピシャペローム(Ssa1と相互作用するタンパク質)の比較解析から、T492リン酸化はSsa1の相互作用ネットワークを変化させ、翻訳伸長速度、翻訳忠実度およびP-bodyの動態にも影響する可能性が示唆された。

著者らはCWI経路を介したHsp70のリン酸化が、従来のシャペロン滴定モデルに先行する迅速なHsf1活性化機構であることを提案している。一方で、Ssa1エピシャペロームの変化の生理的意義については未解明の部分が多く、熱ショック以外のストレス応答への関与、転写誘導以外のストレス応答との関連、脱リン酸化の制御など、興味深い課題が多く残されている。(紹介者:船橋)

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Ehses et al. (2026) Structural remodeling of the mitochondrial protein biogenesis machinery under proteostatic stress

Sci. Adv. 2026. https://doi.org/10.1126/sciadv.aed3579

プロテオスタシスストレス下におけるミトコンドリアタンパク質合成機構のリモデリング

 本論文ではクライオ電子線トモグラフィー(cryo-ET)を用いて、プロテオスタシスストレス下のHeLa細胞におけるミトコンドリアの構造変化を解析した。Cryo-ETでは、薄片試料を傾けながら撮影し、二次元画像から三次元構造を再構築する。再構築された画像から、ストレス下ではマトリックス内にタンパク質凝集体が形成され、それに伴いクリステの変形や消失、ミトコンドリアリボソームの減少が起こることが視覚化された。

 さらに、ミトコンドリアタンパク質のフォールディングに関わるmHsp60の単粒子解析を行った。mHsp60はmHsp10と結合しhalf-football構造を形成するが、ストレス下ではhalf-footballが2つ会合したfootball型が、特に凝縮体近傍で優先的に形成されることが明らかになった。また、通常時に多く存在するmHsp60のSingle-ringはADP結合型であることが新たに示され、ATPに交換されることによりフォールディングが開始されるというモデルが示唆された。今後は、mHsp60/mHsp10と他の品質管理因子(mHsp70、mHsp90、プロテアーゼなど)との関連に注目し、品質管理機構を統合的に理解していく必要がある。(紹介者:関本)

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Leder et al. (2025) A multichaperone condensate enhances protein folding in the endoplasmic reticulum.

Nat Cell Biol. 27, 1422-1430. DOI: 10.1038/s41556-025-01730-w.

小胞体内腔の複数のシャペロンによる凝縮体はタンパク質のフォールディングを促進する

 全タンパク質の約3分の1は小胞体(ER)でフォールディングや糖鎖修飾などの翻訳後修飾を受ける。特に、PDI familyタンパク質によるジスルフィド結合形成は、正しいタンパク質フォールディングにおいて重要な過程である。本研究では、PDI familyの中でも機能解析が十分に進んでいないヒトPDIA6に着目した。In vivoおよびin vitro解析により、PDIA6は非ストレス条件下で液-液相分離(LLPS)を介した凝縮体を形成し、ERストレスによるER内Ca²⁺枯渇に伴ってこの凝縮体が解消されることが示された。次に、NMR解析により、PDIA6の凝縮体形成には二種類の分子間相互作用が必要であることが明らかとなった。PDIA6はチオレドキシン様ドメインのa0ドメインおよびaドメイン、さらに機能未解明のbドメインから構成され、a0-aドメイン間には正電荷を帯びた柔軟なリンカー領域が存在する。一つ目の相互作用はa0ドメイン同士の相互作用であり、これによってPDIA6が二量体を形成することが示された。二つ目は、a0-aリンカー領域の正電荷とbドメインの負電荷との間に生じる静電的相互作用である。さらに、bドメインはCa²⁺結合によって構造変化を起こすことが示され、Ca²⁺が凝縮体形成の制御因子として機能する可能性が示唆された。また、PDIA6とER内腔シャペロンであるBiP、PDIA1、ERdj3、Grp94、およびそれらの基質であるプロインスリンの局在解析から、PDIA6の凝縮体に複数のシャペロンと基質が含まれていることが示唆された。さらに、PDIA6凝縮体の生理的意義を検証した結果、タンパク質フォールディングの促進とER内の恒常性の維持に寄与することが示された。著者らは、ER内においてPDIA6を足場としたシャペロン凝縮体が形成され、それがタンパク質フォールディングを促進するというモデルを提唱した。今後は、PDIA6凝縮体のER内における空間的配置や、トランスロコンとの位置関係の解明が期待される。(紹介者:行方)

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Wuyundalai Bao et al. (2022) Diversity Analysis of Bacterial and Function Prediction in Hurunge From Mongolia. Frontiers in Nutrition. 2022 | https://doi.org/10.3389/fnut.2022.835123

モンゴルのフルンゲにおける細菌の多様性解析と機能予測

近年の工業化や生活様式の変化により、伝統的なクミス製造法が減少し、Hurungeに含まれる有用微生物資源が失われつつあることが問題視されている。Hurungeは前年の発酵クミスを乾燥保存して翌年の発酵に利用するモンゴル伝統のスターターであり、クミスの風味や品質形成に重要な役割を果たす。しかし従来の培養法では微生物全体を十分に解析できなかったため、本研究ではモンゴル4地域(Bulgan、Ovorkhangay、Arkhangay、Tov)から12試料を収集し、細菌多様性と代謝機能を包括的に解析した。Figure 1ではモンゴル国内の試料採取地点が示されている。Table 1では各試料のシーケンス数やAlpha多様性指数(Ace、Chao、Shannon、Simpsonなど)が示され、BEG1で最も多くの菌種が検出され、ZY2で最も高い多様性が確認された。Figure 2ではShannon指数やSimpson指数、希釈曲線が示され、解析深度が十分であることが確認された。Figure 3のPCoA解析とクラスター解析では、Tov地域の試料が他地域から大きく離れて分布し、地域差による細菌群集構造の違いが示された。Figure 4のVenn diagramでは地域間で共有されるOTU数と固有OTU数が示され、Bulgan地域が最も多くのOTUを持つことが分かった。Figure 5では門レベル・属レベルの細菌構成比が示され、Firmicutes門やLactobacillus属が優占していること、動物皮袋発酵試料でAcetobacter属が増加していることが確認された。さらにFigure 6ではKEGG解析による機能予測結果が示され、代謝関連遺伝子、特に炭水化物代謝・アミノ酸代謝関連機能が高頻度で存在することが明らかとなった。この研究から、Hurungeは地域環境や伝統的発酵法によって特徴的な微生物群集を形成していることが分かった。また、QHA試料に見られたKomagataeibacter属のような有用菌の存在は、ナノセルロース生産など新たな産業利用の可能性も示している。本研究は、モンゴル伝統発酵食品に含まれる有用微生物資源の保存や、将来的なプロバイオティクス開発、クミスの工業的生産への応用に向けた基礎資料となる研究である。(紹介者:田中豪)

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Xiaomeng Tang et al.(2026) Metabolically regulated proteasome supramolecular organization in situ

Cell. 2026 Feb 19;189(4):1153-1169.e16. doi: 10.1016/j.cell.2025.12.035.

PSGはプロテアソーム三量体の積層によって形成される準結晶構造である。

これまでの研究から、プロテアソーム貯蔵顆粒(PSG)のように、多様な非膜オルガネラが形成されることが知られている。しかし、その形成過程や構造の理解は、細胞内構造解析の解像度の限界によって妨げられてきた。本研究では、in situクライオ電子トモグラフィー(cryo-ET)を用いて、PSGの形成過程および構造の観察を行った。

対数増殖期の細胞では、プロテアソームは主に核内に観察された。一方、静止期へ移行中の細胞では、不活性型プロテアソームが三量体を形成し、核膜孔周辺に多く局在していることが明らかとなった。さらに、静止期まで培養した細胞を観察した結果、PSGは三量体化したプロテアソームが繊維状に積み重なり、それらが束状に配列した準結晶構造(paracrystalline arrays)であることが示された。

また、三量体形成時にRpn9が隣接するプロテアソーム同士の接触に関与していることが示唆されたため、rpn9Δ株を用いて解析を行ったところ、三量体およびPSGの形成が阻害された。一方、著者らは他の欠損株についても解析を行ったが、それらではPSG形成が確認された。

最後に、PSG形成過程を理解するため、プロテアソーム間距離を経時的に測定した。その結果、三量体プロテアソーム間の頭部間距離および側面間距離はいずれも同様の傾向で短縮していた。このことから著者らは、三量体が繊維形成と束形成を同時に進行させることで、PSGが形成されると考察している。

本研究により、PSGの構造および形成過程が明らかとなった。特に、PSGが従来考えられてきた液-液相分離(LLPS)による凝縮体ではなく、準結晶構造であることが示された。

また、本研究は、他の非膜オルガネラについても、必ずしもLLPSによる凝縮体ではない可能性を示唆している。    (紹介者 : 田中照)

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Liao et al. (2025) Tom40 functions as a channel for protein retrotranslocation in the mitochondria-associated degradation (MAD) pathway. Commun Biol 8, 1122. https://doi.org/10.1038/s42003-025-08549-z

ミトコンドリア外膜のTOM40複合体はミトコンドリア関連分解(MAD)における基質のレトロトランスロケーションに関与する

ミトコンドリアタンパク質の分解経路の一つとして、マトリックス内のタンパク質をサイトゾルへ逆行輸送(レトロトランスロケーション)し、Cdc48などの隔離酵素を介してユビキチン-プロテアソーム系により分解するミトコンドリア関連分解(MAD)がある。本論文では、単離したミトコンドリアを用いたin vitroの実験系でMAD基質Kgd1の放出量を調べることにより、MAD基質の輸送が外膜のタンパク質搬入に関わるTOM40複合体を介していることを明らかにした。また、基質の放出はATPに依存的・膜電位に非依存的であることを見出した。本論文では、TOM40の構造的阻害やTOM複合体のサブユニットの欠損により基質の放出量が減少したことから、基質の輸送がTOM40を介していることを確かめている。しかし、TOM複合体の変異による影響は、MAD基質のCdc48へのリクルートに関わるDoa1の欠損といった、通常時と異なる条件においてのみ認められた。加えて、MADで分解されるKgd1は数%程度の少量であったことから、プロテアーゼによるタンパク質分解や、マイトファジーなどが存在するミトコンドリアの品質管理においてMADがどのような意義をもつのか疑問が残る。また、著者らは先行研究において酸化的ストレス条件下でKgd1とCdc48の相互作用が増えることを確認しているが、このようなストレス条件下ではMADがどの程度影響をもつのかについても、今後の研究成果を期待したい。(紹介者:関本)

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