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Journal club 2025

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Boncella et al. (2020) Composition-based prediction and rational manipulation of prion-like domain recruitment to stress granules. Proc Natl Acad Sci USA. 117(11):5826-5835. doi:10.1073/pnas.1912723117

ストレス顆粒へのプリオン様ドメイン導入はアミノ酸組成に基づいて決定される

プリオン様ドメイン(PrLD)は天然変性領域(IDR)の一種であり、酵母のプリオンドメインに組成的に類似した、Q/N(グルタミン/アスパラギン)を豊富にに含むドメインである。ストレス顆粒に局在する多くのRNA結合タンパク質にPrLDが含まれることが知られている。本論文では、酵母のタンパク質に含まれるPrLDに注目し、35種類のタンパク質中のPrLDの凝集と凝集しやすいPrLDの特徴について解析を行った。46℃の熱ストレス条件下で凝集した(>60% of cells)PrLDとそうでないPrLDのアミノ酸組成を比較すると、凝集したPrLDは荷電したアミノ酸、疎水性アミノ酸の割合が大きく、極性アミノ酸の割合が小さいことが明らかになった。また、このようなアミノ酸組成の偏りから、アミノ酸組成に基づいてPrLDの凝集を予測するモデルを考案した。このモデルでは、ストレス誘導性のPrLDの凝集体形成を従来のプリオン予測アルゴリズムよりも高い正確性で予測することができた。また、このモデルに基づいて、アミノ酸置換による凝集の制御や、人工的に凝集の有無をコントロールしたPrLDの合成を行うことができた。さらに、PrLDの凝集体はストレス顆粒因子であるPab1と共局在していたことと、アミノ酸配列をランダムに入れ替えたPrLDで凝集の有無は変化しなかったことから、PrLDのストレス顆粒へのリクルートはアミノ酸組成によって決められていることが示唆された。しかし、これらの特徴や予測モデルの精度は全てPrLDに限定的である。PrLDの組成がタンパク質全体やその凝集にどの程度影響するのかは不明であるため、今回の結果を足掛かりに解析が進むことが期待される。(紹介者:関本)

Mochida K et al. (2020) Super-assembly of ER-phagy receptor Atg40 induces local ER remodeling at contacts with forming autophagosomal membranes. Nat Commun. 11(1):3306. doi: 10.1038/s41467-020-17163-y.

ERファジーレセプターAtg40は多量体化して小胞体の折り畳みを誘導する

栄養枯渇下では小胞体(ER)やミトコンドリアといったオルガネラが選択的オートファジーの対象になる。選択的オートファジーでは各標的上にレセプタータンパク質が局在化し、隔離膜上のAtg8と相互作用することでオートファゴソームへ効率的に隔離される。これまでにERファジーのレセプタータンパク質としてAtg39とAtg40が同定されたが、ERファジーの機構については不明な点が多い。本論文ではERファジーにおけるAtg40の機能について解析した。まず、Atg40の疎水性領域にはヘアピン構造を持つことから、レティキュロン様ドメインを持つことが推定された。レティキュロンタンパク質であるYop1、Rtn1、Rtn2の三重欠損株で見られたERの異常なシート状構造の異常がAtg40の過剰発現により解消されたことから、Atg40はER膜を折り曲げる機能を持つことが示唆された。次に、ラパマイシン処理時にAtg40はAtg8と共局在し、foci形成時に同じ速度で輝度が増加したことからオートファゴソームの形成とAtg40の凝集が同時に起こることが示された。そして、人為的にAtg8を凝集させAtg40の凝集を誘導するとYop1がfociに共局在したことから、オートファゴソーム内ではERが高度に折り畳まれていることが示された。これらの結果から、Atg40はAtg8と相互作用して凝集することでERの折り畳みを促進する機能を持つことが明らかになった。(紹介者:清水)

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Peyman P. Aryanpur et al. (2022) The RNA Helicase Ded1 Regulates Translation and Granule Formation during Multiple Phases of Cellular Stress Responses. Mol Cell Biol. 42(1):e0024421. doi: 10.1128/MCB.00244-21.Epub 2021 Nov 1.

Ded1は適切なストレス応答に重要である。

Ded1は翻訳開始前複合体(PIC)の構成因子であり、mRNAの5′-末端から開始コドンに達するまでのスキャニングにおいて、RNA helicaseとしてmRNAの2次構造解消を担っている。また、さまざまなストレス下でDed1が液液相分離してストレス顆粒(SG)に隔離されることが知られており、ヒートショック下ではSGへのDed1の隔離がハウスキーピングmRNAの翻訳抑制を引き起こすと報告されている。著者らはこれまでに、TORC1阻害下でDed1がeIF4G1をPICから引き抜き、共に分解されることで翻訳抑制が誘導されるという、新たなモデルを提唱した。本論文ではDed1自身のオリゴマー化とeIF4G1との結合に関わるC末端領域を欠失したded1-ΔCTを用い、DED1の過剰発現と酸化ストレスへの応答を調べた。ded1-ΔCTは過剰発現時にSGを形成せず、増殖抑制を緩和させた。また、ded1-ΔCT株とΔtif4631(eIF4G1欠損)株は野生株と比べて酸化ストレスへの適応に時間を要することを明らかにした。著者らは、酵母のストレス応答におけるDed1のC末端領域の重要性を再確認し、ストレスへの初期応答や適応段階、およびストレスからの回復段階などの複数の段階で、Ded1が重要な役割を担うと結論付けた。(紹介者:寺島)

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Jianhui Li et al. (2019) AMPK regulates ESCRT-dependent microautophagy of proteasomes concomitant with proteasome storage granule assembly during glucose starvation. PLoS Genet. 2019 Nov 18;15(11): e1008387. doi: 10.1371/journal.pgen.1008387.

AMPKはグルコース枯渇中にESCRT依存性のプロテアソームのミクロオートファジーをPSGのアッセンブリーと同時に制御する

 

AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、ヒトから酵母まで真核細胞に高度に保存されているセリン・スレオニンキナーゼであり、通常は細胞内エネルギーの低下に応答して活性化される。一方、Endosomal Sorting Complex Required for Transport complex (ESCRT)は酵母のmulti-vesicular body (MVB)の形成に関与するタンパク質群である。また、酵母のプロテアソームは炭素源枯渇条件下で細胞質にProteasome Storage Granules (PSG)を形成することが知られている。さらに、窒素飢餓条件では、プロテアソームがオートファジーによって分解(プロテアファジー)されることも報告されている。PSGの生理的意義については、プロテアファジーからの回避が一説として考えられているが、詳細は未解明であり、その細胞内制御機構も十分に明らかになっていない。

これまでの研究では、プロテアファジーは主に古典的なマクロオートファジーによって生じると考えられてきた。この論文ではAMPKが、ESCRT依存的にaberrantなプロテアソームのミクロオートファジーを誘導することを明らかにした。低グルコース条件下でプロテアファジーをimmunoblot法で解析した結果、AMPK変異体 (snf1∆・snf4∆)ではプロテアファジーが完全に阻害された。一方、ESCRT変異体 (vps mutants)では、一部の条件下でのみプロテアファジーが生じることが確認された。酵母では液胞でのタンパク質の輸送および分解にESCRT依存的なミクロオートファジーが関与することが知られており、ミクロオートファジーの標的として報告されているVph1の分解についてimmunoblot法で解析を行った。その結果、窒素飢餓条件下では、Vph1の分解にAMPKは必要とされないが、ESCRT機構は必要であった。窒素飢餓下のプロテアファジーにも同様にAMPKは必要なかったことに基づき、著者らは低グルコース条件下におけるプロテアファジーは、ESCRT依存的なミクロオートファジーによるものであると結論付けている。ただし、Vph1の分解とプロテアファジーとの関連性を裏付けるさらなる証拠が必要である。これらの結果は、低グルコース条件下でのプロテアファジーがESCRT依存的なミクロオートファジーに起因していることを示唆している。(紹介者:今城)

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